「エリオット……」

「あ……ジャネット!」

小さな声にふと顔を上げると、そこには気まずい顔をしたジャネットが立っていた。



「やだな……恥ずかしい所を見られちゃったね……」

「す、すまない。
フレイザーがいないから、探してるうちにたまたま……」

「ボ、ボク……フレイザーとは会ってないよ。」

「あ、あぁ、わかってる……さっきから見てたから……」

「……そう。」

エリオットは、かぼそい声でそう答えてまた俯いた。



「魔法使うの……まだ怖いのか?」

「う…ん。
魔法を発動させようとしたら……思い出すんだよね。
ボクが殺しちゃった人達のこと……」

「エリオット……でも、それは……」

「わかってる!ボクだってわかってるよ!
何度も何度も考えて、あれは仕方なかったんだって思い込もうとした。……だけど……だめなんだ。
またあんなことになったらって……真っ黒に焦げたあの人達の姿が思い出されて……
怖くてたまらなくなるんだ……」

「エリオット……その時、奴等は巫女を殺して……、あんた、それを見たんだろ?」

エリオットは小さく頷く。



「それじゃあ、ダルシャが殺される所を想像してみろよ。
フレイザーが…セリナが殺される所を想像してみろよ!」

「い、いやだよ!」

「いいか、エリオット!
今から会いに行く獣人は人間を憎んでるって話だ。
だから、仲間が殺られる可能性は強いんだ。
それがわかってるから、ダルシャはセリナを連れて行かないことにした。
あんたがそんな調子なら、あんたも行くべきじゃない。
そんなんじゃ却ってダルシャ達に迷惑をかける。」

「で、でも、ラスターとダルシャだけじゃ……」

「そりゃあ心許ないさ。
でも、今のあんたじゃ足手まといになるだけだ。
仲間を助けたいと思うのなら、もっと本気で行かないとな。」

ジャネットの率直な言葉に、エリオットは唇を噛み締めた。

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