「す、すまない。
その…あいつは……」

「……わかっている。
彼女の事情を考えれば仕方のないことだ。
……フレイザー、今回、君とジャネットはどこか近くで待っていないか?
二人っきりで時を過ごすのも悪くはなかろう?」

「……そうだな。
今回はそうした方が良さそうだ。」

「早く彼女を追ってやれ。」

「え?あ……あぁ……」

ジャネットの歩き去った方向へ、フレイザーは駆け出した。







「……もう少し配慮すべきだったな。」

フレイザーの後ろ姿を目で追いながら、ダルシャは独り言のように呟いた。



「あいつ…最近はけっこう明るくしてたし……つい、あいつと獣人の関わりのことを忘れてた。
……そうだよな。あいつにとっちゃあ、獣人は仇だ。
感情的になるのも無理はねぇ。」

「人数が少なくなるのは不利だけど……
獣人は一人だということだから、大丈夫だよね。」

「エリオット…おまえ、最近、全然魔法を使ってないみたいだけど、大丈夫なのか?」

「う、うん。
森に入る前に練習しとくよ。」

小さな声でそう答えて俯いたエリオットの背中を、セリナは優しく叩いた。



「……大丈夫?
無理はしなくて良いのよ。
ダルシャがきっとなんとかしてくれるわ。」

「ありがとう、セリナ…」



今回の旅は単純に考えれば容易いことのように思える。
なにせ、願い石の在処がすでにわかっているのだから。
だが、その反面、いつもよりはややこしい繊細な問題もあることを皆は改めて感じた。



「獣人がわかってくれれば、彼をアルディの所に連れて行こうと思っている。」

「アルディ?
あぁ、あのアルディか。懐かしいなぁ……」

ラスターは、遠くをみつめながら何度も頷く。



「早いもんだな……
私達は、もうこの世界を一周したんだな。」

「出会ってから、もう三年経ってるんだからな。」

「えっ!?三年も経ってるの?」

目を丸くするエリオットに三人は優しく微笑んだ。

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