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「ジャネット!」
フレイザーの声に、ジャネットはゆっくりと振り返る。
「……なんだよ。
お説教でもするつもりか?」
「そんなことはしないさ。」
「じゃ、なんだ。」
「なんだって……俺達、いつも一緒にいるじゃないか。
……俺、おかしいこと言ってるか?」
ジャネットは小さく舌打ちをすると、さっさと歩き出した。
フレイザーは、早足でジャネットの後を追う。
「……みんな、怒ってるのか?」
「怒る?なんでだ?
誰も怒ってなんていやしない。
みんな、おまえの事情は知ってるんだから。」
ジャネットは、何も答えず、歩みを緩めることもなく、甲板を歩き続けた。
「……私が間違ってるのはわかってる。」
「……みんな、おまえの気持ちを理解してる。」
船の縁に立ったジャネットは、広い海をじっとみつめた。
「わかってるのに……獣人のことを考えるだけで全身の血が沸き立つみたいに憎しみが込み上げて……しかも、なんだかすごく怖いんだ……」
フレイザーは優しくジャネットの腰に手を回す。
「だから……今回は俺達はみんなと離れて行動しよう。
しばらく二人っきりで過ごそうぜ。」
「フレイザー…良いのか?」
フレイザーを見上げるジャネットの視線は、心細いものだった。
「もちろんだ。みんなもそうした方が良いだろうって言ってくれてるしな。」
「皆が……」
ジャネットはそう言うと、何かを考えるかのように視線を伏せた。
「どこか雰囲気の良い町で、二人でのんびり過ごそうぜ。」
ジャネットは、小さく頷いた。
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