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パルメンでの三日はあっという間に過ぎた。
長い商店街の続く港町では退屈することもなく、かといって大きな事件が起きることもなかった。
「ペルージャまでは六日か…すぐだな。」
「あっちに着いてからのことは、詳しく聞いてあるのよね?」
「あぁ、大丈夫だ。
アーニーさんが詳しく教えて下さったから迷うこともなかろう。
」
「問題は獣人がどの程度強いかだけど、ダルシャがいればまぁなんとかなるだろう。
そういえば、フレイザー…あんた、最近、剣術の稽古をしてないな。」
「え?あ……そ、そういえばそうだな。」
フレイザーは照れ臭そうにそう言って笑い、それを見た皆も釣られて微笑んだ。
ただ、ジャネットだけは笑うこともなく、真面目な顔で立ち尽くしていた。
「ジャネット……どうかしたの?」
「え?……いや、別に……」
「でも、なんだか顔色も良くないわよ。」
その言葉にジャネットは唇を噛みしめ……やがて、小さな声で囁いた。
「……どうしても、そこに行くのか?」
「そこって…獣人の住む森のこと?」
ジャネットはゆっくりと頷く。
「……ジャネット…行きたくないのか?」
フレイザーのその言葉で、皆はジャネットの事情を思い出した。
「……行きたくない……そうだな、確かに気は進まない。
だけど……そいつをめった刺しにして殺してやりたい気持ちはある。」
「ジャネット…!」
皆が呆然とジャネットをみつめる中で、ダルシャが最初に口を開いた。
「もしも、本当にそんなことをしてしまいそうならば……君は一緒には連れてはいけない。」
「なんでだ!?
そいつは人間を襲う狂暴な獣人だって話じゃないか。
そいつが願い石を持ってるのなら、殺して奪い取るしかないんじゃないか!?」
ダルシャはゆっくりと首を振った。
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