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「そういえば、オズワルドさんは……」

「あんた方は急ぎの旅をしているのかい?」

「いえ…そうではありませんが……」

「それなら、今夜はここに泊まって行ったら良い。
実は、今、夕飯の買い物に行く途中だったんだ。
良かったら一緒に行かないか?」



トーマスに誘われ、三人は一緒に買い出しに出かけ、彼の家で夕食をいただくことになった。




「オズワルドとはよくこうして一緒に食事をしたもんだ。」

そう呟いたトーマスの声や表情は、とても寂しげなものだった。



「あ…そういえば、あんたらはオズワルドのことを良く知らないんだったな。」

「ええ、オズワルドさんはどういう方なんですか?
私達には関係がないといえばない方ですが、せっかくのご縁ですし、どんな方なのかと少し気になりまして……」

トーマスは、何度も小さく頷いた。



「オズワルドは、あんたより少し若い……だが、精神的にはとても成熟した男だ。
あいつは、自分のことについてはほとんど話さない。
この町に来たのは、七〜八年前だったか。
ふらっと来て、そのまま居着いたんだ。
町の者ともあまり親しくはしない。
あいつはけっこうな男前でな、だが、女が嫌いなのかと思うくらい、誰が言い寄っても素っ気ない態度を取るんだ。
一度わしは聞いたことがある。
結婚はしないのかって……
そしたら、あいつはおかしなことを言ったんだ。
『子供は必要だが妻はいらない』ってな。
子供がほしいというのならわかるが、『必要だ』とは酷くおかしな言いようだと思わないか?
だから、わしは訊ねたんだ。
子供が必要だとはどういうことかって…
そしたら、あいつは『僕はそういう運命のもとに生まれたんだ…』と答えたんだ。
何か、よほど深い理由があるんだろうと思ったからそれ以上は聞かなかったが……なにしろ、少し変わった奴だよ。」

「……そうなんですか。」

ダルシャ達には、オズワルドの答えた言葉の意味するところがわかっていたが、それは当然話せるはずもなく……ダルシャは曖昧な返事をするしかなかった。

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