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「それはだな……」

トーマスは、どこか話しにくそうにしながらも、ぽつりぽつりと話し始めた。



「さっき、オズワルドには仕事を手伝ってもらってると言ったが、わしは、町で子供達に読み書きを教えている。
このあたりには学校がないからな。
夜には読み書きの出来ない大人達にも教えているんだが、そういう資料作りや採点の手伝いを彼にやってもらってるんだ。
ある日のこと…あいつの様子がおかしかった。
何を話しても上の空というのか、落ち着きがなく、明らかに様子がおかしくて、仕事の話なんてとても出来ない状態だった。
だが、理由を聞いても、あいつはただ少し体調が悪いだけだとしか言わなかった。」

話している間に、その時の感情を思い出したのか、トーマスの眉間には深い皺が刻まれた。



「それで…それから何かあったんですか?」

「あぁ…おそらくそのあたりに、一人の女がオズワルドの家にやって来た。
もちろん、あいつはそんなことは一言も言わなかったし、わしが仕事のことで奴の家を訪ねても、今、知り合いが来てるからと言って家に入れてくれなかった。
それと、しばらく仕事が出来ないと言ったんだ。」

「あなたは、その女性を見られましたか?」

「いや……オズワルドはわしにその女を会わせることはなかったからな。
ただ、外にいたオズワルドに用事でもあったのか、たまたま外に出て来た時に、わしが近くを通りがかってな。
オズワルドは、女にすぐに家の中に入るように言ったから、その時にほんの少しだけちらっと見ただけなんだ。」

「そうなんですか。
で……どんな女性でしたか?
なにか特徴のようなものは…?」

「特徴……?なんせほんの一瞬のことだからな。
オズワルドと同じ位か、ほんの少し若い感じだが、華奢で少しやつれて見えたな。
長い金色の髪を一つに束ねて、地味なローブを着ていたな。」



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