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「あぁ、勝手に入ってしまいましたが、心配しないで下さい。
私達は怪しい者ではありません。
実は……」

ダルシャはこの家に来た事情を、老人に向かってほぼ真実の通りに話した。
老人が誰なのか、オズワルドとどういう関係なのかわからないため、レオナルドが護り人だということは話さず、もちろん、セリナが石の巫女だと言う事にも触れずに、知人に頼まれてオズワルドの消息を確かめに来たとだけ話した。



「そうだったのか……
確かに、レオナルドという人からは度々手紙が来ていたようだ。
ほら、そこにあるのもレオナルドからのものだけだろう?
きっと、心配しているだろうとは思ったが、かといって、他人様に来た手紙を勝手に読むわけにもいかんからなぁ。」

「そりゃあそうですよね。
ところで…あなたは……」

「あぁ、すまなかった。
わしは、トーマスという者だ。
この近くに住んでいて、オズワルドとは普段からけっこう仲良くしている。
彼にはわしの仕事を手伝ってもらってたんだ。」

そう言われ、ダルシャは、畑の向こう側に一軒の家があったことを思い出した。



「オズワルドさんのことですが…あなたにも何も言わずにいなくなられたんでしょうか?」

「あぁ…あいつは何も言わずに出て行ってしまった。
だが……その理由はわかっている。」

「えっ!?本当ですか?
オズワルドさんはなぜここを出て行かれたんですか?」

ダルシャが訊ねると、トーマスは苦い笑いを浮かべた。



「……女だ。」

「女性……ですか?」

「つまり…駆け落ちみたいなもんだな。
俺とあいつは、年こそずいぶんと違うものの、仲良くやってきたつもりだったが、本当に水臭い奴だ。
好きな女がいるなんて話も今まで聞いたことはなかったし、突然いなくなるんだからな。」

「オズワルドさんは事情も話さず突然いなくなられたということでしたが、なのに、どうして、あなたは駆け落ちだと思われるのですか?」

ダルシャはごく当然の疑問を口にした。


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