「第一、あの硝子玉は、僕達の世界にあったもんなんだよ。
ここのものであるはずがないじゃないか。」

その言葉に、フレイザーは唇を噛み締め、何かを考えるようにじっと一点をみつめる。
やがて、フレイザーの口から小さな声が漏れた。



「……そうだよな。
そんなことがあるわけないよな。」

「そうだよ、あの硝子玉とここの願いの石が同じだったら、おかしいことに…
……あ…フレイザー!
あの箱に「願い」と「石」って書いてあるって言ったよね?」

「え……?
あぁ、そうだ。」

「それって何語?」

「何語って…あれは、俺の曾爺さん…いや、そのまた爺さんのだったかな?
とにかくうちに昔からある古い本みたいなものに書いてあった文字でさ。
俺の爺ちゃんがそのうちのいくつかの読みを教えてくれたんだ。」

「それは古代の本か何かなの?」

「さぁな、屋根裏になったのを俺が子供の頃見つけて、そしたら爺ちゃんが懐かしいって言い出して…」

「詳しい事はわからないの?」

フレイザーは黙って頷く。



「ちょっと待ってて。」

そう言いながら、エリオットはダルシャを起こしにかかる。
エリオットに伴なわれたダルシャは、瞼をこすりながらフレイザーの元へやってきた。



「私の番までにはまだ早いんじゃないのか?」

「ごめんね、ちょっとダルシャにお願いしたいことがあって…」

「お願い?何だ?」

「ここに『願い』って書いて欲しいんだ。」

「願い?なぜだ?」

「良いから、良いから!」

エリオットはダルシャに小枝を手渡した。
ダルシャは、納得のいかない顔をしながらも地面に小枝で「願い」と書いた。



「あ……!」

思わず声を上げたフレイザーを見て、エリオットはさらに「石」と書いてくれるようにとダルシャに頼んだ。
フレイザーはそれを見て、エリオットに向かって頷いた。



「一体、何なんだ?
願いと石がどうかしたのか?」

「フレイザー、他に読める字はない?」

「え?…えっと…あ、『空』だ!」

「空?」

ダルシャは指示される前に、その文字を地面に書いた。
フレイザーは、またそれを見て大きく頷く。



「フレイザー、他にはもうないの?」

フレイザーは目を閉じ考えていたが、しばらくして再び目を開けると残念そうに首を振った。


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