「そ、そりゃあ、あんたの気持ちもわからないでもないけど、それは困るな…」

「困る?なぜだ?」

「なんでって…そりゃあ、俺達にも叶えたい願い事はあるし…」

「皆、叶えれば良いではないか。」

「皆?
そんなことが出来るのか?」

フレイザーの質問に、その場には一瞬のおかしな間が空いた。



「フレイザー…まさか、願いの石のこともすっかり忘れてるのか?」

ラスターが、少し呆れ気味に問いかける。



「忘れてるって…願いの石は願いを叶えてくれる石なんだろ?」

「そうだけど…どんな石か忘れてるんじゃないか?」

「どんな石…?」

エリオットはフレイザーと顔を見合わせる。



「やっぱり、そうか…
良いか、フレイザー、願いの石はひとつじゃないんだ。
この大陸に一つずつ…つまり七つあると言われている。
だから、ダルシャは皆って言ったんだ。」

ダルシャはラスターの説明にゆっくりと頷いた。




「な、七つも!?
願いの石はそんなにあるのか…」

「そんなこと、誰だって知ってるぜ。」

ラスター達三人は、目を丸くするフレイザーとエリオットに苦笑いを浮かべてみつめる。




「願いの石はみつけた者が使うことにしよう。
その後は、他の仲間のために探すのを手伝う…」

「仲間…ねぇ…
あんたが最初に石をみつけたら、さっさといなくなりそうだけどな。」

「馬鹿な…!
私は貴族だぞ。
そんな恥知らずなことをすると思うか?」

「……なら良いんだけど…」

「ラスター!
そのくらいにしておけよ。」

フレイザーにたしなめられたラスターは、肩をすくめ、口端をわずかに上げた。







「エリオット、どう思う?
願いの石の話…」

夜の見張りをするエリオットとフレイザーは囁き声で会話を交わす。



「びっくりしたね!
願いの石が七つもあるなんて…」

「エリオット…俺、そのことでちょっと気になることがあるんだ…」

「なに?」

「……まさか…俺達が使ったあの硝子玉…
あれが、願いの石じゃないよ…な?」

「えっっ!どういうこと?!」

大きくなったエリオットの声に、フレイザーはそっと口許に人差し指をあてた。



「俺もちゃんとわかってるわけじゃないんだ。
だけど、俺達の願いを叶えたんだから、あれも願いの石だって言えるんじゃないか?」

「で…でも、僕達の硝子玉は七つじゃないよ、五つだよ。」

「それはそうなんだけどさ…」


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