「そっか…」

「おいおい、エリオット、一体、どういうことなんだ?」

「う、うん。
フレイザーが字を思い出したって言い出したんで、ちょっとね…」

「そういえば、君達は記憶をなくしているとか聞いたが、文字も読めなくなっているのか?」

「そ、そうなんだ。」

「そうか…それは難儀なことだな。
しかし、文字まで忘れてしまうとは…もしかしたら、君達もなんらかの呪いの魔法をかけられたんじゃないのか?」

「そうかもしれないね。
でも、とにかくそのあたりのことも全然覚えてないんだ…」

「だから、願いの石で記憶を取り戻したいのだな…
安心しろ。石はきっとみつかるさ。
私も協力するからな。」

二人に向けられたダルシャの視線は、とても優しいものだった。



「ありがとう、ダルシャ。
あ……」

「どうかしたのか?」

「ううん、なんでもない。」

その後、三人は他愛ない話をしながら夜明けを迎えた。







「なんだ、ダルシャはまだ寝てるのか?」

「うん、昨夜、僕がちょっと起こしちゃったからね…」

「そうか、じゃあ、先に顔でも洗いに行くか…
近くに泉があったからな。」

「ダルシャを一人で置いて行くの?」

「奴なら大丈夫だ。
魔物の気配には敏いから、きっとすぐに目を覚ますだろうぜ。」

四人は眠るダルシャを残し、近くの泉に顔を洗いに行った。
泉の近くには、昨夜は気付かなかった木の実のなる木を発見し、四人はその甘い木の実を口いっぱいに頬張った。



「ダルシャにも持って行ってあげようよ。」

「顔を洗いに行く時に取らせれば良いじゃないか。」

「ちょっとくらい良いじゃない。」

不満げなラスターを尻目に、エリオットは木の実を摘み取る。
やがて、四人が元の場所に戻ると、そこにダルシャの姿はなかった。



「どこに行ったんだろう?」

「小便じゃないか?」

しかし、しばらく待ってもダルシャは戻って来なかった。


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