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「そっか…」
「おいおい、エリオット、一体、どういうことなんだ?」
「う、うん。
フレイザーが字を思い出したって言い出したんで、ちょっとね…」
「そういえば、君達は記憶をなくしているとか聞いたが、文字も読めなくなっているのか?」
「そ、そうなんだ。」
「そうか…それは難儀なことだな。
しかし、文字まで忘れてしまうとは…もしかしたら、君達もなんらかの呪いの魔法をかけられたんじゃないのか?」
「そうかもしれないね。
でも、とにかくそのあたりのことも全然覚えてないんだ…」
「だから、願いの石で記憶を取り戻したいのだな…
安心しろ。石はきっとみつかるさ。
私も協力するからな。」
二人に向けられたダルシャの視線は、とても優しいものだった。
「ありがとう、ダルシャ。
あ……」
「どうかしたのか?」
「ううん、なんでもない。」
その後、三人は他愛ない話をしながら夜明けを迎えた。
*
「なんだ、ダルシャはまだ寝てるのか?」
「うん、昨夜、僕がちょっと起こしちゃったからね…」
「そうか、じゃあ、先に顔でも洗いに行くか…
近くに泉があったからな。」
「ダルシャを一人で置いて行くの?」
「奴なら大丈夫だ。
魔物の気配には敏いから、きっとすぐに目を覚ますだろうぜ。」
四人は眠るダルシャを残し、近くの泉に顔を洗いに行った。
泉の近くには、昨夜は気付かなかった木の実のなる木を発見し、四人はその甘い木の実を口いっぱいに頬張った。
「ダルシャにも持って行ってあげようよ。」
「顔を洗いに行く時に取らせれば良いじゃないか。」
「ちょっとくらい良いじゃない。」
不満げなラスターを尻目に、エリオットは木の実を摘み取る。
やがて、四人が元の場所に戻ると、そこにダルシャの姿はなかった。
「どこに行ったんだろう?」
「小便じゃないか?」
しかし、しばらく待ってもダルシャは戻って来なかった。
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