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「……そうか。
おかしなこと頼んでごめんな。
でも……助かったよ、ありがとう。」
「ううん、たいしたことじゃないよ。
フレイザーは、その……記憶をなくしてるから、いまいち恋愛のこともよくわからないみたいなんだよね。
でも、君のことを想ってるのは間違いないよ。
ただ、どうすれば良いのかよくわからないんだろうって思うんだ。
君も不安になることもあるかもしれないけど……その……そうだ!
フレイザーはああ見えて実はまだ女性とつきあったこともない十代の少年だって思ってたら良いよ。
今の彼はそういう感じだと思うんだ。」
「でも……記憶喪失ってそんな風になるもんなのか?」
「ボ、ボクもよくわからないよ……あ……」
ジャックの部屋でエリオット達が話している時、不意に扉を叩く音が響いた。
「フレイザーかな?」
「違う。フレイザーは、扉を叩く時、必ず『俺だ。』って言うからな。」
エリオットにそう言いながら、ジャックが扉を開けると、そこに立っていたのはダルシャだった。
「ダルシャ!?」
「ちょっとお邪魔して良いかな?
……おや、エリオットもいたのか。」
エリオットの顔を見たダルシャは、そのまま部屋の中へ足を踏み入れる。
「珍しいじゃないか、あんたがこんな所へ来るなんて。
何か用でもあったのか?」
「え……あぁ、まぁそうなんだが……」
ダルシャはちらりとエリオットの顔を見遣った。
「あ、言いにくいことなら、ボク……」
「俺は隠し事はしたくない。
ダルシャ……エリオットに聞かれてまずいような話なのか?」
ダルシャの様子を見て長椅子から立ち上がろうとしたエリオットの腕を、ジャックが引きとめる。
「……いや、それほど重大な話ではないのだが、プライバシーに関わる話ではあるのでな……」
「じゃあ、気にすることはない。
ダルシャ……話してくれ。」
エリオットの視線に、ジャックはゆっくりと頷いた。
「実はな……先程、フレイザーが私の部屋に来た。」
「フレイザーが……?
それで、なんだったんだ?」
ダルシャは込み上げる笑いを押さえ、それを咳払いで誤魔化した。
「……恋の相談だ。
ジャックともっと仲良くなりたいのに、その方法がわからないから教えてほしいと、な……」
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