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「……どうした?
思いつかないのか?」
「う、うん……考えてみれば、今までそういう話をしたことなかった。」
「なんだって?彼女の好きなもののひとつも知らないのか?
なんてことだ……君って奴は全くもう……
……そういえば…君達は身体の関係はどうなんだ?」
「か、か、か……」
さらりと口に出されたダルシャの質問に、フレイザーの顔は途端にひきつって真っ赤に変わり、その舌はもつれて言葉にならず、ただぱくぱくと空気を求めておかしな動きを見せる。
「……どうしたんだ!?」
フレイザーの奇妙な様子に、ダルシャは目を丸くする。
「だ、だだ………」
「もしかして、今の質問に動揺したのか?」
「だ、だから……」
フレイザーの赤い顔から吹き出る汗に、ダルシャは小さなため息を吐いた。
「君達はずっと同じ部屋なのだし、そういうことは当然あるものかと思っていたが……
本当に少年のようだな……」
ダルシャはフレイザーをみつめて小首を傾げ、フレイザーは、怒ったような顔でぷいと視線を逸らしてテーブルの上のワインを一気に飲み干した。
「お。俺は、あんたとは違う!
か、簡単に、そんなこと出来るか!」
「そんなこと…?
愛し合う男と女がそういうことをするのはごく自然なことではないか。
それとも……もしかしたら君は何か身体に問題でもあるのか?」
「そ、そんなものはない!
だけど……ジャックには辛い過去もあるわけだし、そのあたりのことは慎重に考えてやらないと……す、好きだからって、そんなに急に手を出したり出来るか!」
「それはそうだが……
それにしても、好きな女性と同じ部屋にいて何もせずにいられるとは、君はずいぶんと冷静な男なのだな。」
「だから!俺はあんたとは違うんだって!
もう良いよ!俺は自分で考える!」
そう言うと、フレイザーは乱暴に扉を開けて、ダルシャの部屋を後にした。
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