「それを聞いてとりあえずは安心したよ。
だけど、フレイザー……もうちょっと…なんていうか……ジャックに優しく出来ない?」

「優しく?
……って、どういう風にすれば良いんだ?
俺、あいつに冷たくしてるかな?」

「いや……そういうわけじゃないんだけど……」

「じゃ、どういうことなんだ?」

「だから……」

言い澱むエリオットの傍を、仲の良さそうなカップルが歩いて行く。



「そうだ!
君達、一応、恋人同士なのにまるで友達同士っていうか、兄弟みたいっていうか……とにかく、そんなじゃない。
恋人同士っていうのは、ほら…もっと、こう甘くて……」

エリオットは、通り過ぎた二人の姿を目で追う。



「無茶言うなよ。
俺とあいつがさっきの二人みたいに手を繋いだりしてたらおかしいだろ?
一応、俺も言ったんだぜ。
だけど、あいつはあの格好が長かったせいか、なかなか女の子らしい格好は出来ないみたいだ。
まぁ、急には無理だろうし、仕方ないかなって思ってるんだ。」

「だけど、フレイザー……
もうボク達五つ目の大陸にいるんだよ。
あと二つ、願い石をみつけたら、ボク達は元の世界に帰るんだ。
すぐにじゃないにしろ、ジャックと一緒にいられる時間はそう長くはないんだよ。」

「……わかってるよ。
俺もそのことを考えたら、なんだかすごく気持ちが焦ることもあるんだ。
だけど……その反面、却ってその方が良いのかなって思う事もあるんだ。
だってさ……あんまり好きになりすぎたら、別れる時が辛いだろ?」

「……それはそうだけど……」

二人はそのまま黙りこくり……その沈黙の時間が長くなる程、次に話すタイミングを掴めないでいた。



「……あと二つだな。」

長い沈黙を破ったのはフレイザーだった。



「そうだね。」

「そういえば、おまえ……魔法使いになってから願い石は使ってないのか?
ほら、こっちに来る時にさ。
おばあさんが言ってたじゃないか。
魔法使いが願い石を使うと死ぬとかなんとか……」

エリオットは、何度も頷く。


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