「なぁ、エリオット……あのオレンジ色の願い石だけど、何に使う?
何か望みはあるか?」

「ボクは特に願いなんてないよ。
そんなことより、フレイザー……君、ジャックとはうまくいってるの?」

エリオットの質問に、フレイザーは驚いたようにエリオットをみつめた。



「え?……うまくって言えるかどうかはわからないけど、問題はないぜ。
ただ……」

「どうかしたの?」

「昨夜はちょっと揉めたって言うか……
あいつとの口喧嘩なんてしょっちゅうあるから、たいしたことじゃないんだけどな。」

「どんなことで揉めたの?」

「うん……最初はセリナの話をしてたんだけどな。
なんでも、セリナは父親がどんな人かわからなくても、自分は母親に愛されてたからそれで良いんだって言ったらしいんだ。
で、ジャックはその気持ちがわからないって……
ジャックのお母さんは義務感で自分を育てただけで、愛してはなかった筈だってあいつは言うんだ。
だから、そんなことはないと思うって言ったら、あいつ怒って……」

フレイザーは、話し終えると小さな溜め息を吐いた。



「……そうだったの。
ジャックの心の傷は、そう簡単に直りそうじゃないもんね。
で……君は、ジャックのあの話を聞いてもなんともなかったっていうか……気持ちは変わらなかったんだよね?」

「当たり前だろ。
父親が獣人だろうが人間だろうが、それでジャックの何かが変わるわけじゃない。
……正直言って、俺はあいつの苦しみがまだ本当にはわかってないのかもしれない。
もしかしたら、いつか獣人になるんじゃないかってあいつは言ってたけど……それはきっと怖い事なんだろうと思うよ。
そうなったら、人間の世界にはもう住めないかもしれないとか、かといって獣人にも受け入れられないと思ってるのかもしれない。
それに、獣人の子を産んだってことで、ジャックの母親は家族からも見捨てられたってことだからな。
きっと不安なことや憎しみみたいなものがいっぱいあると思うんだ。
……俺があいつになにが出来るかはわからない。
だけど、俺が出来る事はなんだってするつもりだ。
……苦労した分、幸せにしてやりたいって……そう思ってる。」

エリオットは、フレイザーのその話を聞きほっとしたような表情で頷いた。


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