「そりゃあそうと、この大陸の願い石はもうみつかったっていうのに、なんでわざわざ遠くの港から船に乗るんだ?
フォスターから乗れば早いのに……」

ラスターの質問に、ジャックはちらりとセリナの方に目を遣った。



「あのね…それは私のせいなの。」

「セリナの?」

セリナはゆっくりと頷く。



「皆、イリヤのことは知ってるでしょう?
イリヤの住んでた村のはずれに、石の巫女に詳しいおじいさんがいたってことをジャックが教えてくれたの。
多分、そのおじいさんは石の巫女の護り人だと思う……」

「セリナ……何なの?
その石の巫女の護り人って……」

「私もよくはわからない。
母様から聞いた話は本当にほんの少しで……
そうね、最初に巫女のことを話さなきゃいけないわね。
私達、石の巫女は結婚は出来ない……正確にいうと愛する人と結ばれることはないの。」

セリナは淡々とした口調で話し、そのことを知らなかった三人の顔が、驚きの表情に変わった。



「セ、セリナ……どういうことなの?」

「私も詳しいことはわからないのだけれど……石の巫女は顔も名前も知らない人の子を宿すのよ。
何も見えない暗闇の中でね…
その相手を探して来たり、そういうことをする機会を作るのが石の巫女の護り人と呼ばれる人達らしいの。」

その話にはダルシャも驚き、セリナの顔をじっとみつめた。
皆が驚いて呆然とする中、ただ一人冷静なセリナがさらに言葉を続ける。



「本来なら母様から話を聞くはずだったと思うのだけど、私達は悪い奴らに追われていたり捕まったりで、なかなか落ちついて話をする機会がなかったの。
だから、私も護り人という人達がどういう人かわからなくて……
母様に会えば話を聞けると思うけど、その前に護り人さんに直接会って話を聞きたいと思ったの。
だって、きっと会える機会なんて滅多にないでしょうから。」

衝撃的なセリナの話に、誰も口をきく者はいなかった。


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