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「よし、わしがあんたをその村まで連れて行ってやろう!」

不意に聞こえた声に、皆が一斉にダグラスの方をみつめた。



「本当ですか?ダグラスさん。」

「あぁ、本当じゃとも。
実を言うと、わしは常々イグラシアに行ってみたいと思うとったんじゃ。
しかし、わしももうこの年じゃ。
よほどのきっかけがないと旅行は出来ん。
じゃから、ちょうど良かったんじゃ。」

「……だ、だけど…船に乗るんだろう?
どうやって…」

カインの言うことはもっともなことだった。
獣人がまともな手段で船に乗れるはずはない。
しかし、船以外、隣の大陸への移動手段はないのだ。



「そうじゃ!大きなトランクの中に入ってもらうのはどうじゃ?
皆、船に乗る時には大きな荷物を持って行くじゃろう?」

「それはそうですが…あなたお一人でこの大柄なカインを入れたトランクを移動させられますか?」

「こう見えてもわしはけっこう力はあるんじゃぞ。
船に乗ってしまえば、あとは船室に隠れておったらええ。」

「爺さん、個室だとずいぶん高いぜ。
それに、船を降りてからロンダリンまではどうする?」

「それは…またトランクに入ってもらって、馬車に乗れば良いんじゃないか?」

「港からロンダリンまで馬車を頼むとなると、ずいぶんかかるだろうな…」

ラスターはそう呟きながら意地悪い笑みを浮かべた。



「金のことなら、私がなんとかする。
だが、問題はダグラスさん一人で大丈夫かどうかということだ。」

「さすがは貴族様だ。
じゃあ、金を使って誰か雇ったらどうだ?」

「……そうはいくまい。
もしも、誰かにバラされるようなことになれば、カインが危ない。」

ダルシャは腕を組み、何かを考えるように瞳を閉じた。



「……ありがとう、皆。
知り合ったばかりなのに、いろいろ考えてくれて…
でも……もう良いんだ。
やっぱり、俺が隣の大陸に行くなんてこと無理なんだ。」

そう呟いたカインにダグラスが頭を下げた。



「すまんのう…わしがもう少し若くて元気であれば…」


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