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「あーーーーーっっ!」
突然大きな声をあげたセリナに、皆の視線が一斉に注がれる。
「どうしたの?セリナ。」
「カインさんもカーク達の村に行けば良いのよ!」
その言葉に、皆、感心したように頷いた。
「誰なんだ?そのカークっていうのは…」
「君と同じ狼族の獣人の住む村だ。」
「ま、まさか!
あんたら、俺以外の獣人と会ったことがあるっていうのか?
それも、村に入ったと?」
カインはとても信じられないといった顔つきでダルシャをみつめた。
「君がそう信じられないのも当然だが、私達はある事情から…つまり、セリナが願い石を探す行程で獣人達の村に辿り着いたんだ。」
「で、でも、獣人は人間達をとても警戒している筈だが…」
「それにはちょっとした理由があってな…」
ダルシャは、カークと初めて会った時のことを話した。
「それにしたって…」
カインが言葉を言いきらないうちに、ダルシャはバッグの中から青い双子石を取り出し、カインの目の前に差し出した。
「これは……?」
「カークの父、その村の族長であるアルディがくれたんだ。」
「……願い石をあんたらに…!?」
「残念ながらこれも双子石の方だったのだが、何かの役に立つかもしれないからと、アルディが持たせてくれたんだ。」
「そうだったのか……」
カインは、青い双子石をみつめながら、じっと何かを考えているようだった。
「ダルシャ、俺、会ってみたい!
俺の同族に会ってみたい!
その村はどこにあるんだ?」
「それが…ロンダリンという町の近くの山の中なのだが……それはここではなくイグラシアなんだ。」
「イグラシア?
どこなんだ、それ?」
「馬鹿だなぁ、俺達が住んでた大陸のことだよ。」
「隣の大陸…!
……そうか……ずいぶんと遠いんだな…」
カインはがっくりと肩を落とし、その表情には暗い影が差した。
生まれて此の方魔物の森から出たことすらない彼にとって、隣の大陸は他の星と等しい程に遠く感じられる場所だった。
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