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「……無理ではない。」

静寂の中、ダルシャの低い声が響く。



「そうよ、そんなこと、なんとでもなることだわ!」

「その通り!
僕達が、一緒に着いていけば良いんだしね!」

セリナとエリオットが、言葉を続けた。



「馬鹿を言うな。
あんたらは願い石を探してるんだろ?
これから行くのは反対側の方角なんだろ?」

「そうだぜ、一日も早くセリナの母さんをみつけなきゃならないんだ。
逆戻りしてどうなる!」

「……大丈夫。
私の母様は大丈夫よ。
そんなに簡単にやられたりなんてしない…」

セリナは泣き出しそうになるのを堪えるように、唇を噛み締めた。



「とにかく、今夜は遅くなった。
今日はここまでにして、明日、また考えよう。」

その晩、ダグラスとラスターはカインの部屋に、そしてエリオットとセリナはカインの両親の部屋に、フレイザーとダルシャは居間で休むことになった。









「フレイザー、少し話があるんだが…」

「なんだい?」

「実はな…」









次の朝、ダルシャは獣人の村のことは何も話さず、朝食を食べ終えるとすぐに屋敷へ戻ると言い出した。
カインも、やはり自分が隣の大陸へ行くなどということは無理なことだったのだと自分に言い聞かせ、一行を見送った。



「ダルシャ、カインさんのことはどうするつもりなの?
諦めるの?」

「私が諦める筈ないだろう?」

「そうそう、このお兄さんは言い出したら聞かない人なんだから。」

フレイザーは、そう言ってダルシャに向かって片目をつぶる。



「で、これからどうするんだ?
貴族様の屋敷なら俺は行かないぜ。」

「では、すまないが町の宿屋で待っていてくれ。
明日…遅くとも明後日には連絡する。」

「あぁ、わかったよ。」

馬車を呼ぼうというダルシャに、ラスターは頑なに歩いて帰ると言い張った。
ダルシャはそれ以上何も言わず、ダグラスを伴ない、リュシーの屋敷に戻った。








「あ、リュシーさんだ!
リュシーさ〜ん!」

ちょうど庭に出ていたリュシーをみつけ、フレイザーが大きく手を振った。
リュシーもそれに応えるように手を振り、門の方へ歩み出す。



「じゃ、俺は行くからな!」

ラスターは、逃げるようにその場を立ち去った。


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