10
*
「それならうちにあるぜ。」
カインの一言で夕食の席が驚きに包まれた。
皆で夕食を採りながら、ダルシャがここへ来た意図を話した時のことだった。
「カ、カイン…い、今なんて言ったんだ?」
「だから、石ならうちにあるって言ったんだ。」
「ほ、本当なのか?」
「あんたら…わかってんのか?
うちにあるのは願い石とは言っても、双子石の方だぜ。
……ちょっと待ってな。」
カインは立ち上がり、チェストの引き出しから石を持って戻って来た。
「そんな所に…」
驚きを隠せない一行の前に、カインは黄色い双子石を無造作に置いた。
「こ、これが願い石……」
ダグラスは、食い入るように石をみつめる。
「でも、双子石の方だぜ。
そんなもん、何の役にも立ちゃしない…」
「爺さん、もってみなよ。
見た目よりけっこう重いんだぜ。」
「触っても良いのか?」
「あぁ、もちろんだ。」
ダグラスは恐る恐る手を伸ばす。
ダグラスの指先にひんやりとした冷たい感触が走り、それを愉しむかのようににっこりと微笑むと、両手で包み込むように持ち上げた。
「おぉ…本当じゃ。
見た目は華奢な感じなのに質量はけっこうあるんじゃな。
双子石とはいえ、なんとも神聖な感じがするのう…」
「そう言われればその通りですね。
双子石もかけられた魔法を解除する力があるのだから、特別な石に違いないわけですし。
しかし、残念だ…またも双子石だったとは…」
ダルシャは、気落ちした表情で俯いた。
「なぁ、爺さんは、この森にある石が双子石だとは知らなかったのか?」
「もちろんじゃ。
わしはてっきりここには願い石があると思っていた。」
「それは仕方ないことかもしれないな。
俺が聞いた話だと、人間はみつけた願い石を俺達にくれたらしいんだ。
友情の証としてな。
その代わりに、俺の先祖は薬草の知識を与えたということらしい。
皆、この石が願い石だと信じてたんだ。」
「じゃあ、カインはなぜこれ双子石だと知ってるの?」
エリオットの質問にカインはわずかに顔を背け、小声で答えた。
「そ、それは…願いが叶わなかったからわかったんだ…」
- 103 -
しおりを挟む
コメントする(0)
[*前] | [次#]
トップ 章トップ