カインの家の中は、人間の家とさほど変わらないものだった。
一行は、通された部屋の長椅子に恐る恐る腰を降ろす。



「ちょっと窮屈だが、我慢してくれよな。
あ、何か飲むか?
……って、その前に傷の手当てをしなくちゃな。」

カインは早口でそう言うと、少し決まり悪そうにダルシャをみつめた。



「これなら大丈夫だ。
たいしたことはない。」

「……すまなかったな。
でも…仕方なかったんだ…」

「あぁ、わかっている。
勝手に入って来た私達が悪いんだ。」

カインはこの森のことを話し始めた。
元々、この森には獣人達が住んでいた。
ある時、森の中に人間が迷いこんだ。
詳しいいきさつはわからないが、その人間と獣人達はわかりあい仲良くなった。
その頃、この森の周りには少しずつ人間達が住みつくようになっていた。
このままでは獣人達がみつかるのも時間の問題かもしれない。
人間は、この森に住みつき、そのさらに奥には魔物がいるという噂を流し、念の入ったことには魔法使いに頼んで木を黒く変色させた。



「なんと!そういうことじゃったのか!」

「爺さんが聞いてた話とはずいぶん違うみたいだな。」

「わしの曾爺さんは子孫に嘘を吐いてまで、獣人達を匿おうとしたのか…」

「えっ?じゃあ、あんたは俺達を助けてくれた人間の子孫なのか?」

「あぁ、ダグラスじゃ、ヨロシクな!」

二人は固い握手を交わした。
最初はカインのことを恐れていた一行も、彼の話を聞いてるうちにすっかり打ち解けていた。
ダグラスのそれをきっかけに、それぞれが自己紹介を始め、やがていつの間にか皆で夕食の準備に取りかかっていた。



「こんなに楽しい気分で料理をするのは初めてだ!」

笑顔で鍋をのぞくカインの横で、ラスターやダグラスは野菜を切ざみ、エリオットはテーブルに食器を並べた。



「ダルシャ、大丈夫か?」

「あぁ、こんなものすぐに治るさ。」

口ではそう言ってはいたが、それがけっこうな深手であることは傷の手当てを見ていたフレイザーにはよくわかっていた。



「こんな時、回復の魔法を使える者がいたら良いのに…」

「君がこうやって手当てをしてくれるんだから、そんな者必要ないさ。
ありがとう、セリナ。」

セリナはその言葉に嬉しそうにはにかむ。


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