「そんな情けない顔しないでよ。」

「……酷いじゃないですか。」

「でも、魔物がいないとわかっても、あなたは一人じゃ行っちゃだめよ。
フレイザーさん達と必ず一緒に行くんですよ。」

ダルシャを子供のように諭すリュシーを見て、エリオット達は込み上げる笑いを必死に押し殺した。
そんな三人を、ダルシャが睨みつける。



「では、私達はこれからダグラスさんのお宅へ行ってみます。」

何事もなかったようにリュシーの方に向き直り、ダルシャは冷静な声で呟いた。



「そう…あ、ダグラスさんは甘い物がお好きだから、お土産を持って行くと良いわ。」

そう言って、リュシーはメイドに指示をした。







「では、行って来ます。」

バスケットを抱えたダルシャを先頭に、四人はリュシーの屋敷を後にした。



「すっごく良い匂いだな。」

「あ〜あ、本当だったら僕達がこれをおやつにいただくはずだったのに…」

「仕方ないじゃないか。
また新たに焼き始めるとなると、時間がかかってしまう。」

「いいなぁ…ダグラスさんは…」

フレイザーは、ダルシャの抱えるバスケットをうらめしそうにみつめた。



「ねぇ、ダルシャ、その森は近いの?」

「そうだな…子供の頃は少し遠いように感じていたが、そうは言っても歩いて見に行ってたのだからそう遠くはないはずだ。
せいぜい…」



「お〜〜い!」

その時、遠くからの男の声が聞こえた。



「あ、ラスターだ!
ラスター!」

ラスターの姿はみるみるうちに大きくなって来る。



「ラスター、どうしたの?」

「そ、それは、こっちの台詞だ!」

息を切らしたラスターが、苦しそうに答え、水筒の水をぐびぐびと飲み干した。
四人は、そんなラスターの様子を見ながら、彼の息が整うのを待っていた。



「……あんたらこそ、どうしたんだ?
俺は、昨日あの町で良い話を聞いたから、あんたらに教えに来たんだ。
そしたら、目の前をあんたららしいのが歩いてるのが見えて…」

「ラスター、まさか、その良い話って願い石の話なんじゃあ…」

「なんで知ってるんだ!?」

「そうだったのか。
それで、どんな話を聞いたんだ?」


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