「良い部屋だなぁ。
こんな良い部屋にただで泊まらせてもらうなんて、申し訳ないくらいだ。」

フレイザーは、シルクのカバーの掛けられたベッドの上にごろりと横になりながら、ダルシャに向かって呟いた。



「ここにはめったに来る者もいないから、叔母はたいそう喜んでるよ。」

長椅子に深深と腰を沈めたダルシャが微笑む。



「そういえば、ダルシャの叔母さんって、えらく若いじゃないか!
叔母さんっていうより姉さんって感じだぞ。
一体いくつなんだ?」

「叔母はうちの父親の妹なんだけど、父は兄弟の中でも一番年上で、叔母は一番下なんだ。
だから十歳以上年が違う。
私ともちょうどそのくらい違うんだ。」

「十歳以上か…あれ?
ダルシャっていくつだっけ!?」

ダルシャはその問いには答えず、窓の外を眺めながら、ゆっくりとした動作で紅茶のカップに口を付けた。



(言いたくないってことか…
俺達よりはずっと年上だよな。
う〜ん、30歳くらいか?
でも、だとしたら、あの人は40過ぎてるってことになるな。
もっと若く見えるけど、女性の年ってわからないからなぁ…)

フレイザーは、ふかふかと気持ちの良いベッドの上で、妄想に耽った。



「ダルシャ、叔母さんは結婚してないのか?」

「あぁ…実は叔母には、昔、悲しい別れがあったらしいんだ。
それ以来、どんなにすすめても結婚しなかった。
だから、結婚の話だけはしないでやってくれ。」

「そうか、わかった。」








「わぁ、すごいご馳走だね!」

食卓に並べられた豪華な料理に、皆、目を輝かせていた。



「皆さんのおかげで、今夜は楽しい夕食になりそうですわ。
さぁ、たんと召しあがって下さいね!」

美味い料理に舌鼓を打ちながら、食堂には楽しげな笑い声が響く。



「リュシー叔母様、叔母様はこのお屋敷にお一人で住んでらっしゃるんですか?」

「ええ、両親はもう亡くなりましたし、ここには使用人達と私だけなんですよ。」

「えーっ!
リュシー叔母様はそんなに美人なのに、どうして結婚しないの?」

不意に飛び出したエリオットの質問に、ダルシャとフレイザーは、苦い顔を見合わせた。


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