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「エリオット、セリナ…」
ダルシャが二人に声をかける途中で、セリナの瞳がぱっちりと開いた。
「ダルシャ…」
「起きたのか、ちょうど良かった。
やっと…」
「ダルシャ…このあたりに…」
セレナが心細げな声を絞り出す。
「どうした、セリナ?」
「……石の気配を感じる…」
「石…?」
その時、御者の手によって馬車の扉が開かれ、美しい中年の女性が玄関で手を振るのが見えた。
建物は立派だが、貴族の屋敷にしては華美な所のない落ちついた品の良い屋敷だった。
「リュシー叔母様!
おひさしぶりです!」
ダルシャは、馬車の外に出て大きな声で叫びながら手を振った。
「さぁ、いこう!」
ダルシャは、セリナの手を取り、フレイザーは、まだ寝ぼけ眼のエリオットを支えながら馬車を降り、玄関に向かった。
「まぁ、驚いた!
誰かと思ったら、ダルシャじゃないの…あなたもずいぶんと大きくなったのね。
これじゃあ、町ですれ違ってもあなただって気がつかないわ。」
「叔母様、お会いするのは何年ぶりになるでしょうか。
以前お会いしたのはもうずいぶん昔のことだと思うのですが、叔母様はあの頃のままですね。」
「まぁ…!
ダルシャったらいつの間にそんなに口がうまくなったの?」
「お世辞なんかじゃありませんよ。
本当のことです。」
「まぁまぁ…とにかく皆さん中へどうぞ。
お疲れになったでしょう?」
リュシーは、皆を屋敷の中へ案内してくれた。
(とっても綺麗な人だねぇ…
それに…誰かに似てるような気がする…)
(ダルシャに似てるんだよ。
瞳の色も同じじゃないか。)
(あ、そっか!
そういえば、そうだね!
それにしても立派なお屋敷だね!)
エリオットは廊下の高い天上を仰ぎ見る。
(当たり前だろ。
貴族の屋敷なんだから。)
(なんだよ、フレイザーだって、貴族の屋敷なんて初めてのくせに…)
(そういやぁ、そうだったな!)
そんなことを話しながら、声を押し殺して二人は笑った。
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