「じゃあ、俺はこの町でブラブラしとくから、あんたらは好きなだけ貴族の屋敷で遊んできな!
あ、だけど、ここでの食費や宿賃がかかるから、少し用立ててくれよ。」

意地悪げな表情で、ラスターはダルシャの前に片手を差し出した。
ダルシャは、黙って財布を取り出し、ラスターの手の平に金貨を乗せた。
ラスターはそれを見て、浮ついた口笛を吹く。



「さすがは貴族様だ。
じゃ、この金はあり難く頂戴しときますよ。
……さぁ、早く行ったらどうなんだ?
あ、早速、馬車が来たようだぜ。」

ラスターは、振り向きもせずに頭の横でひらひらと手を振って、町の中に消えていった。
四人は、そんなラスターの後姿をみつめながら、今、着いたばかりの馬車に乗りこんだ。



「……なんで、あぁなんだろうね…」

ダルシャの方を見ながら、エリオットが申し訳なさそうな声で呟いた。



「ありがとう、エリオット。
でも、私なら気にしていないよ。
それより、やはり悪かったかな?
彼を一人にしてしまって…」

「構わないだろ、奴は自分の意思で来ないって言い張ったんだし。」

「行き先は言ってあるんだし、寂しくなったら来るんじゃないかしら?」

「それはないだろ。
奴はあれだけ貴族のことを嫌ってるんだ。
きっと意地でも来ないだろうよ。」

「じゃあ、早めに帰ってあげなきゃかわいそうだね。」

そんな会話をしていた四人も、いつしか馬車の心地良い振動にうつらうつらとし始めた。
馬車が走るごとに周りの緑が深くなって行く。
町を出て数時間が経った頃、さらさらという清流の音に、ダルシャが目を覚ました。
窓に顔を近付け、ダルシャは音の源に視線を移す。



「懐かしいなぁ…」

「……え?なんだって?」

ダルシャがふと漏らした呟きに、隣にいたフレイザーも目を覚まし伸びをする。




「あ、起こしてしまったか、すまなったな。
でも、もうじき着くぞ。」

「いつの間にかすっかり眠ってたみたいだな。
あ…綺麗な川が流れてるんだな。」

「子供の頃、あの川で遊んだ記憶がある。
本当に懐かしい…」

それからほどなくして、森の中の屋敷の前へ来て馬車はようやく停まった。


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