Order of the Phoenix-7



本部。新学期を目前に迎えムーディは汽車までの配置や手筈を皆へ伝えた。当日向かうことのできる、シリウスを除くメンバーでの、ハリーの護衛だった。ハリーとそれぞれ間隔をあけ、背後もウィーズリー一家とハーマイオニーが固めている。

「…先頭はわしとトンクスでいく。名前は本で汽車へ乗れ、詩の一か所にだけ"汽車"の単語があるそうだ。間違っても毎年恒例の前乗りはよせよ。時間は…―」

指定されたのは、汽車がすでにホグワーツへ走っている頃であろう時刻。最後の年に限って買い物にも、人気の少ないあの駅にも行けないとはと名前は俯いた。いいな名前、と話し終わったムーディへ頷いていると、"じゃあ"と、我先にと声を上げたのはフレッドだった。

「俺がその護衛に回ろうか、」


「「……?」」


皆の視線がフレッドに寄せられる。名前も戸惑い横目でフレッドの表情をうかがった。いつもならジョージあたりが"お前ももう汽車に乗ってるよ"とか"そういうジョークか?"なんて飛ばしたりするが、あまりにフレッドが真剣なので何も言い出せなかった。

「一瞬の本の中を護衛するつもりか?」

何を言ってるんだとムーディが呆れて、さっさと解散を促す。"本当だな 何を言ってるんだ俺は …"などジョージへ漏らして頭をかくフレッドから、視線を逸らしつつ、名前は"へんなの"程度に思っていた。



……――

「そうむくれるな。別行動のほうがかえって君を守れるんだ」
「分かってるけど、当分来れないと思うと ね…。卒業したら向こうで過ごすつもりだから」

名前が使っている部屋をシリウスが訪ねた。長年、新学期前はきまって顔を合わせた魔法使いたちとも、人からは恐れられる怪しげな店や宿とも、こんな別れ方になるなどあんまりだ。無念な気持ちをどうにか晴らそうと、事前に本から"汽車"でも探しておこうと手にとっていた。シリウスはドアのすぐそばで壁に肩を預けとくにかしこまったりはしないまま、まぁ無理もないと話した。

「毎年一番乗りだったからな」
「…なんでシリウスが知ってるの?」
「君が話したから」
「私? まさか」
「話したさ!場所や天気も言おうか?」

笑い、思い返される犬の姿の彼とホグワーツで過ごした少しの期間。柔らかく笑う名前の表情に、シリウスは少し安堵した。歩み寄り、名前の手元に視線を落とすと名前も彼に見えるように本を開いた。

「魔法界で働けばいいじゃないか。…あぁ、喫茶店か、いいな。犬用の出入り口も付けておいてくれ」
「要らないよ。ハリーと来るんだもの」
「……あぁ そうだな」

ふとシリウスは背後をうかがい、まるで誰にも聞かれていないか確認して、小声で名前に話したのは、名前とは此処きりだが、ハリーのことはなんと駅に見送りに行こうと企てているという内容だった。仮にも追われる身が、大丈夫なの?とか、心配の気持ちは多少あったが、心配したって無駄なのだろうと、"そう"とだけ返して笑った。

「…マグルの世界へも必ず、君に会いに行く。ハリーと共に」
「ありがとう。……グリは私の友達だからね」
「あぁ。そうさ!」

笑顔を交わし、言い聞かせるように名前の肩に手を置いてから、シリウスは部屋を出た。別れを惜しむのは魔法界だけでない、この世界で大切な存在になったすべての人だ。
フレッドジョージとも、もしやこのままなのか。特に気を付けて意地を張っているつもりもなく、なんとなくもう自然には接しにくくなってしまったのはどうしてか。
以前彼らと笑い合っていたのを少しでも思い返そうとすれば、すぐに泣きたい気持ちにかられてしまう。感情を誤魔化すように視線を逸らすと『魔法動物大図鑑-海編T』が目に留まり、結局名前の瞳いっぱいに涙は溜まった。
今の自分たちに、セドリックならなんて声を掛けてくれるだろう。まるで彼が何か伝えようとしているサインのようにとれ、一人になった部屋で名前は、そのタイトルにそっと指を這わせた。

prev | top | next















×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -