Order of the Phoenix-8



新学期開始の駅。シリウスと落ち合ったハリーは、犬の姿であろうが危険を顧みない彼の行動に肝を冷やすが、「見送りがしたくて」と言われれば自然と笑みを浮かべてしまった。入り口をムーディが監視する。同行中も怪しい動きが周囲にないかと、名前が手筈に背いてまさか来てやしないか見張っていなければならないというのに、わざとらしく軽い足取りで現れた大きな黒犬には、まったく頭を抱えた。
名前の影をつい探してしまう人物は、彼の後方にも数名居た。

「フレッド落ち着け。名前は言い付け通り汽車に現れる。俺たちじゃないんだから」
「ええそうね。でもそういうあなただって、さっきからキョロキョロしすぎよジョージ、かえって目立つからおやめ」
「「…母さんもね」」

数年前の名前なら彼らの心配通り、きっと言い付けなど破るためのものと簡単に背き、一番にボックス席を陣取りゆったり座って本でも読んでいただろう。だが現在の、大人になった、グリフィンドール生でなくハッフルパフ生の名前は違う。そう心配されているとは知らず、言い付け通り本部でローブに手を通し、片づけた部屋の中心にトランクを添え、パララ、と詩集を用意していた。
"汽車"の文字を見つけ、一度時計を見上げる。長い針がカタンと動いたのを見届け、指でトンと詩集をノックした。パラパラと音を立て舞い上がるページが名前を包み、強い光に閉じた目を開ければ、景色は一瞬で、音を立てて走る汽車の中に変わった。
ふう、と息をつきトランクをしっかりと持つ。ボックス席へ続く扉を開ければ、生徒たちの賑わいが耳に届きだす。

名前を見つけたフレッドジョージがはたと気付いてこちらに向かう途中、満面の笑みのハッフルパフ生が二人を追い抜いて駆けてきた。勢いそのままに名前に抱き着き、再会を喜んだ。

「元気だった 名前!?」
「ええ!手紙ありがとう。嬉しかった」
「「("手紙"?)」」

バッと目を合わせるフレッドジョージの表情は、長身のせいで彼女たちによく見える。名前の手を取ったまま、それを盗み見た友人の一人はそのツラを笑い、行こう名前、と数人まとまって賑やかなままボックス席を目指した。それは簡単なことで、ダンブルドアが、名前を思う生徒たちになんの慈悲も与えないわけではなかった。会いたい願いは叶えられなくとも、素直に名前へ手紙を出したいと言われれば、彼女を保護するあのアパルトマンの宛先をすんなり教えた。
取り残されたかのようなフレッドジョージはやけくそ気味に、名前達とは別のそのへんのボックス席を探す。
名前は数歩で、ハリー達の席に通りかかった。

「、ハリー。みんな」
「「名前、」」

視線を寄越し、ハーマイオニーとロンのようにこちらへ声は掛けないハリーを、全員が不思議がったが、間を誤魔化すように名前は少し笑って見せ友人たちとともに再び歩き出そうとした。

「、?」

だがすぐに引き返し、今度はハリーへ目を見張った。名前の変化に連れ添う友人たちも、ロン達も驚いた。ハリーもまた、少し顔色の悪いまま、ハテナを浮かべて名前へ視線を返す。

「…、やぁ名前ごめん…。どうかした?」
「…

ううん、酔っちゃったのかなって。私もごめんね」

手を振りその場を後にする。今一瞬背筋を走った冷たい感触はなんだったのか。ほんの一瞬だったが、それは去年ワールドカップや、閉じ込められた彼から感じた恐怖とは比べ物にならなかった。
心配そうな友人たちに笑顔を返し、今はとにかく、彼女たちと楽しく、ホグワーツを目指すことにした。

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