Order of the Phoenix-5
「なぜ魔法省が僕を目の敵に?」
「……」
「見せろ。どうせ目に入る」
「…? ……」
しん、といったん静かになる食卓。ハリーの横のキングズリーが、バサ、と新聞を取り出しハリーへ渡した。フレッドは自分の席から、ハリーの手の新聞に目を落とす名前を見た。
"嘘をついた男の子。大臣いわく心配無用"とそれは、ヴォルデモート復活を否認するものだった。ワケが分からないというハリーと、考えるように口をつぐむ名前。シリウスが口を開く。今や全員が、耳も目もそちらに向け集中している。
「ファッジ大臣は新聞に圧力をかけ中傷している。闇の帝王復活を語る者をな」
「なぜ?」
「…ダンブルドアが大臣の座を奪うと」
ハリーに答えたのはルーピン。また別の矛先がダンブルドアには向けられている。
「おかしいよ 敵じゃないのに!」
「大臣も復活を語ってるようなものね」
「その通り。ファッジは今まともじゃないんだ。恐怖で思考がゆがんでる。…恐怖は人を追い詰める」
口を挟んだ、真剣な目を新聞から離さない名前とルーピンへ忙しく目を向ける。名前の物言いにフレッドジョージはしかめ、その言い回しにトンクスは口角を上げて笑いを押し殺した。魔法大臣による大規模な自己暗示と名前はとらえ、新聞がだんだんとみすぼらしく感じてきたが、社会的影響は絶大だろう。
「以前ヴォルデモートは我々の愛するものを滅ぼした。そいつの復活という事実を大臣は直視できない。…恐怖のあまり。」
「ヴォルデモートは軍団を再構築してる。…」
ルーピンも、続けるシリウスも、真剣にハリーの目を見つめる。ふとシリウスの、話しだす様子の変化に、何気なく彼へ目を向けていた名前はハテナを浮かべた。14年前の軍団の結成を物語り、だが、とシリウスは、まるで意を決したように改まる。
「だがやつの関心は、他にもある」
「…?」
ムーディの咳払いは、偶然じゃないのだろう、パチと目の合ったアーサーはなんとも気まずそうな表情で少し笑って名前から目を逸らした。奥で野菜を刻むモリーの手もふと止まる。
「…やつは、…"ある物"を求めている」
「シリウス」
「…… 前回は持っていなかった」
今度ははっきりと、やめろというようにムーディが遮るが、ハリーをじっと見つめさらに続けるシリウスに、横の名前までなんだか身が凍る。深刻ながらも" 武器とか?"と返すハリーに、今度はモリーが割って入り、新聞を奪って畳む。
「もうやめて。これ以上話すならいっそ騎士団に入れたら!?」
「望むところだ。 僕も戦いたい」
溜息でもつきそうだったシリウスが、打って変わって"よく言った"というような素振りを見せる。名前は物怖じせず飛び込むようなハリーに若干戸惑い、シリウスとハリーを交互に見るしかなかった。
やがて食事を始め、名前はずっとフレッドジョージの居るほうを何となく見れずにいたが、モリーを手伝おうと歩み寄った際、フレッドからえいと口を開けた。そんなつもりはないのに、ぶっきらぼうになってしまう。そうなれば名前もそう返し過去の過ちを繰り返すだけなので、ジョージも十分気を付けて加わった。名前は空いた皿に構うのをやめずに口だけ寄越す。
「来るなんて聞いてなかった」
「言わなかったからね」
「、…なぁ名前、俺たちの手紙読んだろ?黙ってなくたって…」
「手紙?ちゃんと中通り宛てに出したの?」
「「…どこって?」」」
やはり居場所も知らなかったかと若干寂しさを抱きつつ、やっと顔を向けたと思えば"もういいでしょうか?"と表情で言って、魔法にのってやってくる食器とすれ違うようにあちらへ行ってしまった。