Order of the Phoenix-4
「ハリー!」
「「…、…」」
思わずフレッドジョージが笑みを返していたが、名前の目にはハリーしか映っていなかった。トランクもほかの荷物もドアの鍵もそのままに、笑顔を携えてこちらに駆け寄り、隣のシリウスにも目をくれずハリーを抱きしめた。
再会を、目を閉じて思い切り喜ぶ名前の顔に、フレッドジョージは面白くないという顔をする。解放すると心配そうに次々とハリーに投げかけた。
「ここにはいつ?」
「ついさっきだよ、ムーディ先生達といっしょに」
「じゃあ安心ね…、 休みの間大丈夫だった?私…」
「「 ン゛・ン゛、」」
挨拶も無しか?フレッドジョージはわざとらしく、顔でのみそう言って咳払いをした。名前ははたと止まるも、
「あぁ ごめんなさい」―パチン!―
一度ハリーから目をうつし来た道を振り返る。指の音を一帯に聞かせるように片手間に鳴らして、すぐにハリーを向き直った。ドタンドタン、パタパタパタ、と名前のトランクと荷物は整列して通路の道を開けるように並べられ、少し当たってずらしてしまった額縁もすべて整えられ、ドアの鍵もきちんと閉まった。
その間"新聞を読んで心配した""退学なんて絶対ならないから大丈夫""よく耐えたね"など名前のみが背後に無頓着。ハリーやその後ろのフレッドジョージは、名前の魔法に呆気に取られていた。
「無事でよかった」
「…、ありがとう 名前もね…」
「「……」」
部屋へ通り、ルーピンやアーサーと挨拶を交わしていると、すぐにモリーから声がかかり、労わるように両肩を包まれた。
「あなたが名前?」
「…モリーさん、? はじめまして」
「、平気? そんな筈ないわよね、おいで」
「…」
モリーの優しい声に名前は鼻の奥がツンとする。
家族にも会えずにね。ここでは安心してね。優しく、温かく髪を撫でるモリーに解かれるように、名前の数か月の緊張がやっと緩むことを許される。知らないうちに堪えていた孤独や不安が如何程なものか、名前の潤む視界が物語っている。
名前はモリーの腕の中でだけ、しばらく堪えるのをやめて泣いた。
温かく見守られる中、慌ててガタ、と椅子の音を立てたフレッドの肩を、ジョージがポンと叩いて落ち着かせた。
…――
奥のテーブルはアヒルや豚に擬態するトンクスにジニーが笑い声を漏らし賑やかだが、手前の深刻な話にそれも浸食されていった。ハリーが受ける尋問や、それに関連することが話されていた。隅に立つムーディが目で名前の座る席を差すので、ハリーの隣の、角の席に名前は掛けていた。向かいのアーサーが真剣に目を落とす魔法省の文書と、彼や、彼の両隣のルーピン、シリウスの表情が気になりうかがいながら耳を傾けていた。