Order of the Phoenix-2



とある一室のテーブルのそばを歩くムーディは、ふと扉の四辺から一瞬、強い光が漏れたその向こうの気配に顔を向けた。しばらくして、ゆっくりとドアを開け名前が本を片手に入って来た。
名前の顔を目にした途端、ムーディは眩暈を堪えるように目を閉じた。名前が何か言うより先に「シリウスだな」と口を開くと、その重い声に身動きを制される気持ちになりつつ、小さく頷いた。

「住まいへ戻れ名前。無理に堪えてわしと話すな」
「…違います、待って」
「本はあるな」
「ムーディ先生!」

奥の別の扉へ向かうムーディへ呼びかけるが見向きもされず名前は焦って駆け寄る。一目彼を見るとやはり記憶は蘇りふと手を意思を保つかのように握り合わせたが、鼻のきく名前からすればポリジュース薬で姿などを同じにしようと、その人の漂わせるにおいは薬以外も明らかに異なり、話す素振りも全く違って見えた。

「先生お願いします!私だって考え無しにあなたを訪ねたわけじゃ、…」

シリウスの助言通り、教えを乞い、自分と自分の大切な人を守る必要があった。そのためなら、多少の自分の恐怖心など後回しにすべきだと、どう考えてもその結論に至った。だがムーディとて考えの末至った結論であることは同じで、他人の仕業とはいえ自分の"姿"による被害者の傷をえぐる真似はしたくなく、する必要だってどこにもなかった。
名前は扉まで進むムーディに言葉を続けるのをやめ諦めかけると、ムーディは名前の予想と反して足を止めた。

「見せてみろ」
「…え」
「何か見せてみろ。それで今日のところは帰れ」
「!! はい、えっと…」

ゆっくり振り返り、ムーディは名前が指を鳴らすのを待った。突然許され、始まった実践試験に少し焦ったが、一度落ち着いて、名前は指を鳴らし、以前スネイプへ呼び掛けたときのように、小さな火花を走らせ、ムーディの少し手前で弾けさせた。

「…名前、」

本当に動作で魔法を、と少し見入ったのは隠し、ムーディは想定した順序通り、心底呆れて見せた。これで諦めてもらおう、お勉強は自力で頑張るか他をあたってくれと伝えるために、見せろと言ったのだった。
その程度では、と諦めさせる文句を並べるあいだ、名前は視線を彷徨わせいじけているようにも見えた。これでよし、とムーディが満足そうに再び出口を目指そうとした瞬間、

―パチン!!―
― ドタドタ、!―


「!!! ………」
「…………」

若干むきになるように名前はもう一度指を鳴らし、今度はムーディの体を鷲掴んでグルン!とこちらを向かせるように魔法を飛ばした。杖の繰り出す魔法と気配も種類もまるで違うそれに不意をつかれ、目を丸くしたムーディと、気まずそうに俯きながら彼へ目を向ける名前の間に、少し沈黙が流れた。


…――

「ディメンターがこの町に?世の中おかしいね」

夏、ハリーはダドリーと二人、住み慣れた町で突如二体のディメンターに襲われた。今にも失神しそうなダドリーに肩を貸し、レインコート姿のフィッグとともに夜道を進み、家を目指す。

「なぜ知って…」
「ダンブルドアが見張れと」
「ダンブルドア…?ダンブルドアを知ってるの?」
「"例のあの人"にセドリックを殺された後で…、手下に襲われた名前は保護してあんたを一人にするとでも?」

もっと賢いかと、と笑うフィッグは戸惑うハリーとは異なり余裕が見える。外に出ずに連絡を待てと、ひそめた声で念押ししてフィッグは彼らが家に入るまで見送った。
ディメンターがつい先ほどまで居たこの世界の夜道の静けさは、いつもより数段不気味に、意思を持つ闇のように見えた。

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