Goblet of Fire-28



城の外は、二校の見送りに賑わい笑顔の生徒が何人も行き交う。
同様に皆と別れの挨拶を交わしながら、きょろきょろとフレッドジョージは忙しく周囲を見渡し、どこか表情を曇らせる。
広間で見かけた以降、しきりに二人は名前を訪ねたが、居ないと本当か嘘かつっぱねるマダムポンフリーとしか言葉を交わせなかった。過去の自分たちなら"俺たちに会えば元気になる!"程度のことは言い、セドリックの死をともに悲しみ、元気を与え合うことだって出来たろうが、今の三人じゃそれはかなわない。

窓からこちらを見てやしないか、周囲だけでなく医務室のほうもそれ以外の窓にも、くまなく目を凝らした。あの塔に居る可能性も高いが、ここからはあの塔まで臨めない。
長身二人のそんな様子はひどく目に付き、ベンチに一人、浮かない顔で腰掛けるロンの目にも入った。
彼はキスとともに別れを告げにきたフラーと妹にも、少しの笑みだけを返すだけだった。ロンがこうも笑みを浮かべられないのは、ハーマイオニーへ住所を渡し唇に寄せた手を振るクラムを、眺めていたせいでもあった。
賑わう皆に頬を緩ますハリーを見つけ駆け寄ると、ハーマイオニーもやって来た。

「名前は保護されるって。行先は教えてもらえなかった」

教員たちに聞いたらしいロンの言葉にハリーは一瞬喉が詰まった。二校へ向けられた拍手や歓声とは場違いの、沈む気持ちが三人の胸に過る。きっと自分達になら教えてもらえるとハーマイオニーが添えれば、沈んだ一瞬を消し去るように、ロンは笑って気を取り直した。
三人も見送りに混ざろうと歩き出す。

「平穏な年ってあるのかな?」
「ムリね」「ムリだな」

汲んだ二人が同じように笑って答える。
皆変わっていくのね、と、どこか悲しそうなハーマイオニー。ハリーは"そう"とは答えながら、三人の絆は変わらないことをまるで伝えるように、彼女の肩を支えた。

「休み中、手紙をちょうだいね。フレッドになら名前のこと伝えらえるかもしれないし」
「僕が書くわけないだろ」
「… ハリーは?」
「書くよ。毎週ね」

それいいなと言うように笑うロンにハリーも笑みを見せ、真ん中でハーマイオニーは呆れるも、おなじく笑みを見せる。
名前の姿は広間で見たきりだったが、きっと安全な場所で守られるのだろうと、三人は心配を少し軽減させて、賑やかなホグワーツ生たちとともに二校の馬車や船を見送った。


名前はフレッドジョージの予測通り、塔から本を数冊とり、広げた荷物へ力なく加えていた。今頃見送られているところだろうか、歓声はここまでは届かず、生徒達もそちらへ皆出向いていて塔はむしろ無音にちかい。

「……」
「指を鳴らせば済むだろうが、なるべくこっちを使いなさい」

鞄の中へ、重ねようとした本を逸らし、元置いていた本に目を落とす。ダンブルドアに持たされたその一冊は、丈夫さの古びた、ページの多い小さな本で、内容は旅行詩集で、見知らぬ地でこれから守られる自分には必要なものなのだろうと名前は推測した。
広間からの数日、何にも意欲も思考も沸かせる気になれず、瞼のひりつく瞳を暗がらせたまま、半ば投げやりに、逸らした本を上から放り、重ね入れた。

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