Goblet of Fire-24



ムーディが部屋へ連れる頃には、ハリーも嗚咽を落ち着かせ始めており、ペティグリューに血を切り取られた腕を抑え、混乱と恐怖に飲まれ呆然としていた。ムーディは暖炉の前に置いた椅子へハリーを誘導する。

「落ち着いたか?傷は痛まないか」
「…大丈夫です」
「手当てをしよう」

ハリーはまだ恐怖を拭いきれず震える声で、ムーディの耳に入れなくてはと少しずつ話しだした。優勝杯には魔法がかけられておりポートキーとなっていたことを伝えれば、ムーディは消えそうな声で、だが期待に震えるようにも見える表情で静かに問い掛けた。

「どんな …どんな様子だった」
「…?、 誰 ―「闇の帝王だ」
「あっ!?」

突然腕を放られ痛みが走ったハリーが声を上げる。距離を置いてムーディはしきりにヴォルデモートのことを聞きたがる。戸惑いながらも、思い返したくもない記憶をさかのぼりながら少しずつ言葉を繋ぐ間、ムーディはうめき、慌ただしく魔法瓶を漁りだした。
異変に振り返ったハリーに目を合わさず、息を深く吸い込んでムーディは改まり、墓場にはほかに誰がいたのか問いかけた。若干深刻さの増した彼の声にハリーも急いで答えようとするが、ふと踏みとどまった。

「、…僕、 "墓場"だなんて言ってませんが」
「………」

ハリーのもとにゆっくり戻ったムーディを、ハリーは恐る恐る見上げる。今度は違う緊張に包まれる。じっと見たままのムーディは、ハグリッドの口調で一言真似て聞かせて、再びそこら中、空き瓶をキンキンとぶつけ忙しく探し回りながら、ハリーに言い聞かせた。あらかた探して、ズンとハリーに寄る。

「俺があの間抜けを唆し森に誘わせたのだ。卵の秘密は…!セドリックが俺から聞きお前に教えた!出来の悪いロングボトムにエラ昆布の出ている本をやったのは俺だ!!ハ!!!?」
「!!、」

腕を抑え、衝撃に動けなくなったままのハリーは突然上げられた大声に肩を跳ねさせる。信じられないと見入られムーディは"ここが違うんだ"と自身の頭をトントンと指差し、蛇のような舌なめずりを見せると、再び棚のほうへ戻った。投げかけるハリーの声は不信に陥り震える。

「全部あなたが…?ゴブレットに名を入れ、…クラムを」
「"あなたが…!?" "嗚呼 あなたが…!"」

振り返り馬鹿にするように真似た後、表情を怒りに歪めた。

「どの瞬間もこの瞬間も、嗅ぎまわり付き纏ったこいつは想定外だった!」
―ドタン!!―

「名前!!」

大きな開きから乱暴に床へ投げ飛ばされたのは、口と手足を縛られた名前だった。衝撃に目をぎゅっと閉じ声を上げる名前に、ハリーは目を見開く。そのくぐもった声は痛みを耐えるようにも、恐怖を堪えるようにも聞こえ、証拠にムーディを見ることもできず震え続けている。戸惑い名前に手を伸ばすハリーに、ムーディはゆっくり距離を詰める。名前はなんとか身をよじり、そばに来てくれたハリーで顔を隠すように身を縮めた。

「俺がお前を勝たせ、墓場に行くように仕向け目的は遂げられた…」
「!? うっ」
「!!……!」
「この血が あの方を流れている…!」

傷をえぐられ呻くハリーの声に名前が過敏に反応し涙をぽろぽろ流す。ムーディの明らかに狂った様子に、ハリーは絶句したまま、目を見張ることしかできない。その地を大切そうに嗅ぎながら再び距離を置いたムーディから、目を名前にうつし、手を握る。指を厳重に拘束されたロープから逃れようと抗ったのだろう、彼女の両手の傷は痛々しく、ロープに血を滲ませている。


prev | top | next















×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -