Goblet of Fire-23



その課題でハリーに起きた出来事は想像を絶した。魔力に翻弄されたクラムによって迷路の枝葉に飲み込まれるフラー。彼女を救うべく躊躇せずハリーは杖で赤い火花を打ち上げるが、不自然な強風に阻まれダンブルドア達まで届かない。
セドリックとともに翻弄の罠を打破し、またも吹き荒れた嵐から逃れクリアするべく、同時に優勝杯を握った瞬間、まるで優勝杯に連れて来られたように身を投げられた場所は、暗く霧のかかる不気味な墓場だった。見晴らしがいいのに、迷路も、生徒達もどこにも見当たらない。
ペティグリューはゆっくりとハリーたちのもとに現れ、勇敢に杖を構えたセドリックへ、死の呪文が放たれる。
拘束されたハリーの目の前で、ヴォルデモートは完全体を取り戻した。
空には夏と同じ印が浮かばせられ、ルシウスらも墓場へ姿を現した。まるで浮足立つような、狂気の目を見せるヴォルデモートとの一騎打ちが、強い希望で始められてしまった。

「後ろを見せるな!俺様を見ながら息絶えろ!!光が失せていく目を見たい!」
「俺様がとどめを刺す!」

「私が『あの人』ならきっと、あなたのことは自分の手で殺したいと思う」

脳裏に蘇る名前の言葉通り、ヴォルデモートは背後の手下の誰にも手を出させなかった。
同時に放った色の異なる互いの魔力が、激しく衝突する。ヴォルデモートの強い魔力の波に両足で立つのがやっとのハリーの目にうつったのは、この場所で命を奪われてしまったセドリック。
両親も、ハリーに寄り添うように現れた。皆、言葉もはっきりと聞き取れる。
助言する父に力強く頷き、皆の言葉を信用しつながりを断たせ、セドリックの亡骸のもとに急いだ。

彼の冷たくなりだした身に触れたまま、ポートキーである優勝杯を杖で手元に呼ぶと、こちらへ来たときと同じように急速で試合会場へ戻って来た。

激しい緊張と恐怖が一気に解け、セドリックの体に寄り添いながら涙を流した。

場違いなファンファーレや拍手であふれる会場は、フラーの悲鳴とともに、少しずつ状況を理解しだした。
ダンブルドアとファッジが、いち早く駆け寄りセドリックからハリーを離そうとするも、ハリーは強く拒否して、もう受け答えなどしないセドリックにしがみつく。

「どうしたんだ!?」
「戻って来た!あいつが!!ヴォルデモートが!!」

拍手しながら駆け寄り、にこやかな表情を一変させる生徒の中には、フレッドジョージの姿もあった。
涙ながらに必死に説明する、見るからに取り乱したハリーの頬に触れ、ダンブルドアが落ち着かせる。言い聞かせるような彼の声に、ハリーは泣きわめくことしかできない。

「もうよいハリー、よくやった。二人とも戻ったのじゃ」

アーサーとともに訪れていた、セドリックの父もそばへ急ぎ、絶望と悲しみに暮れた。まだ嗚咽をあげるハリーを、ムーディは泣くな、と杖を持たないほうの腕で強く抱く。

「行こう。わしがついている。よくやった」

安心しろ。それらを続けて、ムーディはハリーを、無理に連れゆくように、会場をいち早く後にした。

「なんでこんなことに…」
「ジョージ、俺たちで知らせに行こう。知ったらなんて言うか…」

ムーディの背後、名前を探そうとフレッドジョージも、自分たちも理解が追いつかないながらも、セドリックの死に絶句する皆よりも少し早く、城へ急いだ。

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