Goblet of Fire-21



なかなか姿が見えないハリーに目を凝らす仲間のうち、ネビル一人だけは青くした顔で水面を眺めたまま、ふと口を開いた。名前も彼らと同じように湖の中をうかがいながら答えた。選手かグリンデローか、揺らめく影も見られる。

「名前どうしよう」
「どうかしたの、ネビル」
「大変だ。ハリーを殺した」
「、 何?」

名前が聞き間違いかと振り返った直後、喜びの声を上げて勢いよく湖から飛び出し、魚のように跳ねて見せたハリー。ディーンや名前は安堵の笑顔を浮かべ、周囲も歓声に包まれる。名前がおいでと手を伸ばせば、頭を抱えていたネビルも顔色を正常に戻し、輪に加わって座り試合を見守った。
ふと頭上を見上げると、選手が飛び込んだ付近、沸く生徒の隙間にムーディの姿が見えたので、位置を認識するように、名前は目に入れてから、再び試合に集中した。

しばらくしてフラーの脱落が告げられ、会場に緊張が走る。湖を見守る皆の視線にも、不安がよぎり始めた。名前が見回すと、教員が手元の時計に、やたら目を落とすのが見受けられだす。

突如湖から顔を出したのはセドリックと、助けられたチョウ。歓声が送られ救助が手配される。次々現れる選手と人質に、沸き立つ周囲の中名前は両手を口へやり不安を抑えた。ハリーが遅いこともあるが、心配の種は先ほど脱落したフラーと彼女の人質だった。同じく救助されるのだろうがこの試練が過酷である以上、危険は試合が完全に終わるまで付き纏う。

「ハリー、……  ―!!」
―ザパァ!― 

再び湖からあがった人影はロンと、フラーの妹。同時に時計の鐘が鳴り響き、ロンの姿にフレッドジョージの声が歓声の中一層大きく響く。
名前は口を抑えたまま、ネビルは手すりに肘をつき、今度はそこら中の皆がはじめのネビルと同じ顔色で湖に見入る。
すると高く掲げた杖に引き上げられるように、ハリーは無事湖から飛び出した。

安堵と、試合で一番大きな歓声があたりを埋め尽くす。駆け寄るダンブルドアや寮の友人らに支えられ、ハリーは水を吐きながら、震える体を温めた。
喜びに頬を上げ、ネビルに声を掛けてハリー達のもとを目指す。

一位に輝いたのはセドリック。行動を称され二位の座が、クラムでなくハリーへ送られた。彼ら二人にはもちろん、選手の無事を、何よりも名前は喜んだ。
笑顔で拍手を送る傍ら、少し後方を振り返ると偶然か、少し向こうのムーディと目が遭い、バッとすぐにハリー達へ向きを戻した。そばのネビルが名前?と問いかけるのにも答えられず、拍手もまともにできなくなり握った両手を震えさせた。気のせいだと言い聞かせたまま、会場を後にする生徒に続き、ネビルを誤魔化しつつ、名前もボートを目指した。


先に降りた名前は、後のボートに乗るハリーの到着を待った。一言声を掛けようとした矢先、クラウチに目の前を阻まれ困っている間に、ロン達と共にハリーはやってきた。

「"気高い"か」「いつもいい方向に運ぶなぁ」
「お前は偉い。  ……」

「……」

ハリーに向けていた笑顔も嘘のように、クラウチの背後の名前を目に入れると不服そうなのはお互い様、ムッとするフレッドと鉢合わせる。"なんだ"と口だけ動かしてきたので名前はすっかり冷め、ハリーを祝福するクラウチごと追い抜いて、逆方向へ歩き去った。フレッド以外のジョージ・ハリー・ロンは、それぞれ方向を変えないながらも名前の背をぎこちなく、一目は振り返った。

ムーディの義眼は腹を立て歩く名前の顔と、対照的な、ハリーに笑顔を向けるクラウチの顔を、義眼の景色を拡大させてとらえていた。

prev | top | next















×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -