Goblet of Fire-17



「ダームストラング校の人と行くの。ごめんなさい」

気まずそうに男は去る。フレッドはしばらく成り行きに目をやって何も言わなかったが、突然名前に向かって歩き出した。ジョージは"名前のやつ、そうだったのか"程度の独り言を漏らし、相棒の突然の行動に驚いた。
こちらに向かってくるフレッドに名前や、両隣の友人たちもまた驚く。まさか約束を覚えて?と名前の表情に若干光が差すが、掴みかかりそうな勢いでやってくるフレッドの表情は今までで一番穏やかじゃなかった。後に続くジョージ含め、彼らとこんなに近付くのは久しぶりに感じた。

「お前はいい性格してるよ、ほんと」
「…」

一言一句に力を籠めるように吐き、憎さしか見えない目で見降ろされ名前は少し怖くすら感じたが、言葉の原因も分からなければ急な悪態も受け流してやるわけがなく、引けを取らない目を向け返す。ジョージや周囲の友人たちは、戸惑いだした。

「…何なの?」
「そのままの意味さ。その他校の野郎とでも考えな」
「他校の、??…私の何かあなたに関係があるわけ?」
「あぁないね、よろしくやってろ。あってたまるか。」
「だから何がよ!?ちゃんと話してったら!」
「そりゃお前のほうだろ!!」

「フレッド!!ほらもう行こう!」

聞く耳など持ってやらないというように両者が声を大きくしたところで、ジョージは無理やり止めに入り引き剥がすようにして去った。舞踏会の駆け引きに浮足立つ校内で二人の言い争いは皆の目を引いた。てっきり以前交わした約束かと期待したのも事実。何を言っているか分からなくても自分に大層怒っているのだけは伝わる。感情に任せてポロと流れた涙を乱暴に拭う名前の肩に、友の手が添えられる。
フレッドといえば、約束を一方的に覚えていた自分が馬鹿らしいのと綺麗さっぱり忘れやがってという思いで頭に血が上り、その辺を憂さ晴らしに蹴り飛ばしたいほどむしゃくしゃしていた。ジョージにすまんと呟きつつ、名前の悪態も最後に自分の大声に驚いた顔も、脳裏に鮮明に焼き付いてしまった。
明日は謝ろうなんて思っていたつい数日前がどんどん懐かしいものになり、すれ違いにすれ違いを重ね溝は深まり続けた。


…――

「自分の心配しろよ…!名前と大喧嘩したくせに…」

全員静かにスネイプの課題に取り組んでいる広間で、ロンの小声はハッフルパフ席の一部まで行き届いた。フレッドからメモを受け取り言い返すロンに見せつけるように、フレッドはアンジェリーナに丸めた紙を投げ、ジェスチャーで舞踏会へ誘う。
OKをもらえたフレッドはロンにウィンクを飛ばしそのまま課題へ戻る。周囲と同様、やるなぁとへらへら笑って、ジョージは前方に視線を動かすとはたと顔を変えた。

「…、……」

数人挟んだハッフルパフ席。一連の様子を見ていたらしい名前が、羽ペンも止めて見るからに打ちひしがれていた。すっぽかすつもりでも居たし言い争ったせいで希望は無いも同然だったというのに、他の子を誘うフレッドの様子も、嬉しそうなアンジェリーナのことも、名前にはこたえ、ショックだった。
"しまった"なんて思う必要はジョージにはないのだが、最近以前ほど話せていないとはいえ親友のそんな表情に、そう思わずにはいられなかった。

「そんときは俺は名前と組むね」
「え?」
「押さえたからな。セドリックんとこ行って裏切るなよ」

「……」

ふと数年前の記憶がよみがえり、さてはと、喧嘩のときの行動や名前の表情にようやく合点がいったジョージが隣のフレッドに目をうつす。得意げに、お前も頑張りなとでもいうように肩を叩く相棒は、わざと名前のほうへ顔を向けないようにも、ジョージには見えた。

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