Goblet of Fire-16



第一課題で手に入れた卵の解明に行き詰まっていたのはどの選手も同じで、その一人であるセドリックも、ハッフルパフ寮談話室のテーブルでゆったり過ごしていた名前を頼った。ドラゴンとの関連性だとか、開けても耳が痛いほどの声に困らされるだけだとか、こんな卵の魔法生物は?とか、生憎名前にも何ひとつ分からず、謝られるだけだった。
いいんだ、と返しはするも頭を抱えるセドリックを眺める。彼は舞踏会へは、ひとつ下のチョウと行くんだそう。ぼんやり考えながら名前はなんとなく呟く。

「声に惑わされてるなんてセイレーンみたい」
「何みたい?」
「セイレーン。セイレーンの歌声。水の中から人を惑わすの」
「水の中…」

何かピンときたようなセドリックの表情が焚火に照らされる。名前は構わず、テーブルのどの本に手を伸ばそうか選びながら続ける。

「あなたに借りた本に…―「水の中か!!」

するとその手を両手で握り、セドリックはついさっきまでと全然違う、頬にキスでも落としてきそうなほど満開の笑みを見せる。

「名前、君やっぱり天才だ!ありがとう!」
「何が?」
「試してみるよ!!」
「何を!?」

にこやかなまま、セドリックは卵を掴みドタドタと走って行ってしまった。わけの一つも分からなかったが、ただ彼の様子が面白く少し笑って、次の授業までの空き時間に読むものを選ぼうと手元に視線を戻す。惚れ薬レシピに関わる薬草学の本に触れかけたが、ムッとして、早急に、適当に横のポリジュース薬解説本を手に取った。


…――

名前が舞踏会をすっぽかす意思をとうに固めており、一緒に歩く友人らにも周知済みだった。友人は、断り文句に気を付けないとサボりまでバレると助言したので、名前にとってもそれは困ると、二校を有効活用するんだと作戦立て、万全にすり合わせていた。つい今朝も、気に入ってくれたらしい見知らぬダームストラング生の誘いを、"同じ学校の彼と行くから"と断っていた。
彼女たちには話していない、フレッドとの約束とも呼べないような約束だけ少し気になっていたが、セドリックが茶化しただけに終わり本人は何も覚えていないだろうと予想していた。
懸念した通り、同校 別寮の同学年の顔見知りが、かしこまって名前の元にやって来た。

「ありがとう。でも先約が居て…」

近くだが別の通路を、フレッドジョージが通りかかる。誰のであっても舞踏会の誘いは一目で分かるし視線を集める。フレッドジョージも同様で、名前と男に目を向けた。

prev | top | next















×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -