07
「俺たちと組もう、名前!」
「名前の知識と行動力と情報力と」
「それから好奇心と真面目さと先生たちの信頼と」
「おっかない魔法使い達との繋がりが必要なんだ!」
「お断りします」
びしっと礼儀正しく羊皮紙を両手で差し出しても二人はなんでだよ!嗚呼名前!などと言って頭を抱えたりするだけで一向に受け取らない。名前は怪しい店でも怪しくない店でも、自分を否定しない良い魔法使いたちのことが大好きだからこそ足を運ぶし、懐いている。そんな人たちをまるでだしにするような真似ができるものかという思いだった。
この協力とやらだって、最終的には助かったが、この二人が無理やり恩を名前に着せてきたものだ。
「二人は楽しめるようだけど?肝心な私に何も返ってこないじゃない」
「そんなことない!これはビジネスだからな。お礼はするときとしないときがあるだろうしその上名前の勉学に役立っていく」
「それに俺たちといると退屈しないぜ」
「はいはいそれでも!絶対にお断りよ!この紙のことだってそう、急に言われたって私が何か知っているわけ…!…、 ……」
「「…?」」
ジョージから順に説明されたぼんやりしすぎているメリットにやはり断って当たり前と確信した直後、ふと言うのをやめて名前は何か引っかかるようにまた羊皮紙に目を落とした。黙ってしまった名前・羊皮紙・相棒の顔・名前 の順に二人が目を向ける。
「名前? ―パシン!― うぉっ、!? 」
恐る恐るジョージが覗き込んだとき、名前がおもむろに羊皮紙の中心を中指で強く弾いたので、ジョージは目を見開いて慌てて取り上げ名前から羊皮紙を遠ざけた。
「何するんだよ!やぶれちゃうだろ!!」
「聞いたことある話があって」
「こいつのことでか?」
もうビンゴの表情を見せて加わるフレッドに、分からないけど と名前はぽつぽつと話し出す。宿がいっしょになった、あちこちボロがきている服をまとった魔法使い
と、その話の内容を、少しずつ答え合わせするようにぽつぽつと。
「前に宿で、すごく耳がきくっていうおじいさんと昼食がいっしょになって、共通点があって楽しかったから少し話したの。…私は鼻がいいんだけど、」
すかさずフレッドとジョージは互いを振り向き、やはりこの子を手離せないぞと声も出さずに目だけで会話。名前は真剣に羊皮紙を見つめていて気付かない。ダイアゴン横丁が一年生と両親で賑わったあの時期を思い返す。
ホグワーツ 新一年生ね…おめでとうは言ってやれんな。そりゃホグワーツは一流だが、一流の、良い魔法使いも悪い魔法使いも大抵あそこが生んだ奴等だ。
「誰か覚えがあるの?」
あるな。小さくたってやるこた一流なのが。
赤いマフラーの見習い魔法使いがいっつもそこらをコソコソしてた。誰かに話しかけられようもんなら決まって小〜さくなって、" 、! !"
言わなきゃ振り向かない。すべて隠したつもりだろうが俺の耳は誤魔化せんさ。
手帳を指ではじいてたんだ。
それをしねぇと振り向けない、大人に見つかっちゃまずい何かがあったんだろ。さぁ何を隠してたんだかね。……
「「"悪戯完了"……」」
二人の顔は感動そのもの。名前といえば何にそんなに感動できるのか理解不能だった。そもそもこの羊皮紙が関係あるかどうか、無い可能性のほうが高いというのに。