Goblet of Fire-15



ハリーの番は一番最後で、名前は一番気が気じゃなかった。背けた目に手をやって小さくなる名前の姿は、フレッドジョージからもよく見えたが、フレッドは"名前のやつ"と不服な気持ち紛らすように、さてと表情を明るめて双眼鏡をハリーへ向けた。
呼んだ箒に飛び乗ったハリーを追うべくドラゴンが繋がれた鎖を強く引きちぎった。名前は絶望して直後に教員席へ目を向けるが、誰も中断なんて呼びかけない様子にさらに絶望を重ねた。大会がどのようなものか名前は理解していたつもりであったが、その厳しさに直面し、戸惑った。ふと目にとまったムーディは、これまでも見掛けたように小瓶を口の中目掛け傾けている。
会場を飛び出したハリーとドラゴンに贈られる歓声に、フレッドが「やれ!ドラゴン!!」と叫ぶ声も乗せられる。ハッフルパフ席と違い、拍手の手も嬉々とした表情も目立つグリフィンドール席。セドリックの番が無事終えていたこともあるが、名前とフレッドジョージの不一致のように、生徒の性質がありありとそこにも出ていた。

姿が見えなくなり少し静かになる会場、名前は自分の握った両手に目を落とすと若干震えている。こんな恐ろしい大会でなければいつもの好奇心一色の目を、4頭のドラゴンすべてに向けるだけで済んだだろう。垣間見たハリーの顔や手は、怪我ももう負っており、しばらくして猛スピードで場外から戻った際も更に怪我を増やしていたが、大きくなった歓声から間もなく、無事金の卵を獲得した。へな、と脱力する名前が隣の友人に支えられ、"よかったね名前、"とまで添えられる。


…――

広間で鉢合わせた、片腕を吊るしたハリーに名前が挨拶すれば、安心も見える笑顔が返される。以前と変わらずロンやハーマイオニーと共にいたのを見かけていたので、和解したみたいだねと伝えた。

「課題をきっかけにね」
「よかった。…私たちみたいにならないでって話したかったから」
「…」

ハリーは向こうに座るフレッドジョージに目を向ける。グリフィンドール席に居る彼らはいつも通り話しているが、城の中で見かける彼らと共に名前が居なくては、それが何日続こうとハリーにとっても不自然だった。名前の表情は冴えない。

「名前達だってすぐ元通りだよ」
「どうかな。じゃあね」
「……」

グリが"大切に"と言っていたよとでも言えばよかったか、なんともなさそうな彼らが辛いようにも見える名前が足早に去るのを、止めたいけど止められず、彼らと交互に見ることしかできないまま、名前の背中を見送った。


広い教室の一角、ハッフルパフ寮全学年の授業で、対抗試合と共に伝統的に行われる舞踏会の内容が知らされ、名前はつい癖で舞踏会を調べものの時間に充てるプランを練りかけたが、ふと留まる。二人のための調べものなどもう必要無いのではという考えが過り、少し表情を曇らせると、ブーイング交じりの私語に紛れてセドリックがやって来た。

「またみんなと別行動する気だったろ?ダメじゃないか、フレッドが悲しむ」
「、…? 悲しむ?」
「そう。男女ペアのときのために早くから押さえられてるんだろ?」
「…そんな前のこと、なんでセドリックが知ってるの」
「ああ何度も嬉しそうに言われちゃ誰だって覚える」

呼ばれてさっさと離れてしまう先で、友もまた"名前はフレッドだし、あの子は…"などと話しているのが見える。些細な会話だったが驚いた分、もちろん名前も鮮明に覚えていたが、ペア作りに困らない授業が、まさか舞踏会で、まさか気まずさも抱えている今のタイミングになろうとは思わなかった。

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