Goblet of Fire-14



ずっとこんな感情のまま互いに不愉快さを出し続けるよりも、少しの間素直になればすべて元通りになり簡単に解決してしまうのは、フレッドジョージも、名前もわかっていた。証拠に、小さな塔から駆け下りた名前と鉢合わせた彼らはどちらも、気まずそうではあるものの、ここ最近の悪態が和らいでいる。名前は少々勇気を振り絞って、以前のように自分から謝ろうと口を開いた。

「あの、私 …」

うつむかせた視線が彼らの手元にとまり謝罪の言葉をつづけるのはやめ、その鞄は?と思わず尋ねる。首から掛けられるようバンドが付けられ、中は四つに仕切られ選手らの名前も。口をつぐみ名前の表情をうかがうフレッドの代わりにジョージが賭けるんだよと応える。

「…賭ける?」
「あぁ、みんなでな」「深刻な時こそ必要さ」

加わったフレッド。名前は心を落ち着けるように、少し目を伏せて軽く深呼吸し、そうねと返す。

「こんなときこそ笑いをね」
「「その通り」」
「…… やめなよ。どんな大会か二人も聞いてたでしょ?」

以前広間で彼らに、また中庭で皆にやったように、声を荒げたり怒りをあらわにしたりはせず、名前はまるで諭すように首を横に振る。彼らの調子のその"笑い"というものが皆の心を晴らし助けることもあるが、不謹慎な場合も場違いな場合もある。
ハリーとともにドラゴンを見ていたこともあり危険な大会である理解を深めていた名前は、今回は完全に不謹慎だという思いが強かった。

「みんな怪我ですむかどうかも分からないような試合だよ?お願い」
「はっ 説教か?」

「――――……」

フレッドは名前でなくジョージに笑って問いかけた。数年前自分達に名前が言ったのをふざけて真似ただけのつもりだったが、名前のほうは絶句してすぐ目を二人から逸らした。今度はジョージが名前の表情をうかがう。目の前が真っ暗になったような、静かに、呆れや怒りが頂点に達したような名前の表情を。

「それより名前、俺、  …おい?」

怒らせたんなら謝りたい、ちゃんと話したい、と続けるつもりが、目をそのまま合わせず名前は去ってしまった。名前の考えそうなことが多少分かるとはいえそんなに怒ることとは考えてもいないフレッドがもし続けていたら、少しも伝わってないと名前を更に怒らせただろう。
名前も同じように、二人がしそうなことだという理解もあったが、いつものように呆れて笑う余裕はなかった。名前?と呼びかける二人の声にも断固として振り向かない。頭の片隅に思い返される、自分の手を握る、フレッドの手。心配だった分強く抱き締められる心地。だがもう何も言ってやらない、気が知れないと、意思を固めるように、足を止めないまま息を深く吸い込んだ。

第一の課題の会場にダンブルドアの声とともに、ドラゴンの恐ろしい鳴き声も響き渡る。ハッフルパフ生たちと居る名前の席から、先ほどのかばんを首にセッティングし皆に賭けるよう呼びかける二人はよく見え、うんざりだと目を逸らし溜息を吐いた。
課題の模様はいずれも凄まじく、見守る生徒も教員も、皆ドラゴンが炎を吐くたび身を縮めて驚き、目を見張った。
選手たちに襲い掛かるドラゴンの大きな手足や炎は、大会の凄まじさを物語る。こんなものは命がいくらあっても足りないと名前は周囲の誰よりも身を小さくし、目を逸らし、クィディッチと比べ物にならない不安を抱いていた。

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