Goblet of Fire-13



ずんずんと、怒っている分力が伝わり足取りも強くなる。

「父上は "いや、5分だ" と」
「―ハ…」
「何とでも好きに言うがいい!」

輪に加わり、ハリーに関わるな・この…と名前の出かけた暴言を消すほど、ずっと黙っていたハリーが突然上げた声は大きく庭に響いた。ドラコやお仲間たちは名前に気付き視線をやり、名前もドラコからハリーへ視線を移すが、彼はドラコの肩を突き飛ばしたまま真っすぐに視線をやり腹を立てていた。

「邪悪で残酷な父親に卑劣な息子だ」
「!……」

吐き捨てたハリーは名前に目もくれず踵を返す。頭にきた様子のドラコが杖を出そうとしたので名前がハッと、指を鳴らそうとした瞬間

「おい やめろ!!」
「「!?」」

廊下のほうからムーディの杖が向けられ、ドラコを小さな小さなイタチに変えてしまった。振り返り目を丸くするハリーは名前と目を合わせ、笑顔まで見せる。名前は向こうから、背後からとは卑怯な!と声を荒げるムーディとハリーと、ドラコだったイタチをわたわた見ることしかできない。

「見下げ果てたっ、臆病者の、こわっぱめ!!」
「キキキキキィ、キキキィ、!!」

上下に揺らすムーディの杖の通りにか弱いイタチは操られ、鳴き声がもはやドラコの悲鳴に聞こえてくる。名前はムーディの表情に、誰だったか、なんだか別の面影が重なり見入る。隣のハリーは依然楽しそうなまま、生徒に連れられたのであろうマクゴナガルが慌ててやって来た。突っ立っていた名前に添えられる手にムーディから目を移すと、マクゴナガルの顔は事態の説明を求めている。名前がどうしようか迷いハリーを見れば、まだ笑っている。

「ムーディ先生!何をなさってるんです!」
「教育だ」
「…… それは生徒!?」
「今は白イタチだ」

教育ですって?とわたわたと名前を見たりイタチを見たり忙しいマクゴナガルの表情に、名前はハリーのように笑顔を返すような度胸はない。構わずムーディはクラッブのズボンを鷲掴み中にイタチを放った。当人たちはさらにパニック、眺める生徒たちからは笑いが起きる。ムーディは人目を盗んでハリーにウィンク。大笑いするハリーの隣にいた名前も、そのウィンクを見て、面影も思い過ごしかと、やっと少し笑う。
クラッブのズボンの足首から這い出たドラコはマクゴナガルの杖によってもとに戻り、ムーディにビビり倒したまま"父上に言うぞ"と捨てて全力で逃げ出すが、ムーディは"脅しか?"と返し杖を地面に刺して義足を引きずりながら追いかけた。何もしていなくてもそう来られては、誰もが怖い。
マクゴナガルの制する声が大きくなるまで、ムーディは大声でドラコを怖がらせ続けた。名前は広間でも彼の足取りを目に入れていたが、義足なのかと認識したのは今初めてであった。
マクゴナガルが杖をムーディの目の前に向け言い付けて去るが、背中にはちゃんと、舌をべーっと出してムーディは反論していた。散る生徒達と同じく、刺していた杖をまた手にとりムーディも庭を後にする。

「一緒に来い」
「、…」

「ハリーだ、名前。君じゃない」

こちらを向かず面倒臭そうに言うムーディに、名前は少しの好奇心を乗せてハリーも追い抜く勢いで彼の後に続きかけたがビクと止まった。
じゃ、とハリーに少し言うと、歩きかけたハリーが慌てて戻りありがとう名前と、手を掴んで言い残して、改めて去る。名前は自分の行動が、心無く言われたとおり八つ当たりにも感じられハリーのためと言い切れず、ぎこちなく少し口角を上げるくらいしか、返せなかった。

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