Goblet of Fire-12



マダム・マキシームと、マントを介してハリーと名前に彼が見せたかったものは、複数の大きな檻から炎を漏らす、うめき声の正体たち。

「ハグリッド! …ハグリッド!」

感激したマダム・マキシームがもっとそばで見ようとハグリッドの隣から離れたのを見計らって名前がなんとか呼ぼうとするが今やすぐそこで上がる鳴き声に負けて耳に届かない。同じくハグリッドに聞きたいハリーが待てないというようにマントを上げ、自分と名前の首から上だけを出した。

「ドラゴンが最初の課題なの!?まさか…」
「怖がんなハリー、こいつらは誤解されちょる動物なんだ。名前は、…バックビークを見せれんかったからな。お詫びに」
「ホーンテールね!?すごい…!」

ハグリッドが見下ろす彼らの表情は、恐怖と感激の二極だった。立てられていた壁が暴れ壊され、口から豪快に放たれた炎が目先の木まで届く。一気に眩しくなる視界と肌に伝わる熱がさらに名前を高まらせるが、あれが課題だとすると、名前の不安はいよいよ消せない。感激の表情から今度は心配に染めた目を、隣のハリーに向け、何から言おうか口をぱくぱくさせていると、ハグリッドが口を開いた。

「ロンはひと目見て腰抜かした」
「…… ロンが来たの?」
「あぁ。やつの兄貴がルーマニアから連れてきたドラゴンだ」
「……」
「なんだ、二人とも初耳か?」

ハグリッドが不思議そうな目を向ける。兄が課題に関わるものを、兄が魔法生物を、連れてくるということを自分に黙っていた?ハリーも名前も同じ種類の感情が渦巻きだし二人して表情が変わったので、ハグリッドも少し戸惑った。


…――

昼間の中庭に名前の荒れた声が響く。皆が胸に付けるセドリックの応援バッチはセドリックを讃えハリーの侮辱まで、シュルシュルとふたつのデザインに変わる仕様になっており、名前が気分を悪くする要素があまりに詰まっていた。どこの寮の仲良しであろうとなかろうと、怒りの目を向けた。
ハリーも少し前に、セドリックへ第一の課題がドラゴンであることを告げるべく、バッチを付けたすべての生徒から小さく文句を吐かれながら此処には来ていた。ロンにも最低だと暴言を吐きハリーもまた穏やかでなかったので、目に映る名前の心中を理解できる気がしつつ、心配でもあった。

「外しなさいよ、みっともない!」
「名前は付けてないの?」
「誰が! 恥ずかしくないの?」
「フレッドとよろしくないからって八つ当たりしないでよね!」
アハハ…!

呆れたように言い捨てて去ろうとする名前の背中に、女子生徒は言い返して仲間とケラケラ笑う。さらに頭にきて踵を返しかけるがぐっと留まると、少し向こうに仲間たちといるセドリックともパチと目が合う。ハリーの助言を受けてもセドリックはいつも通りだが、名前は目を泳がせてここを去ろうと足を進める。

「ポッターだ」
「ポッター、お前も名前の奴も何をそうピリピリしてる?」

木の少し高いところに腰掛けスリザリンの仲間たちとハリーを笑うドラコの声はよく響き、名前の耳にも届いた。

「僕は父上と賭けた。お前は試合で10分ももたないと」
「、」

こいつには言い返してもいいだろうと名前は踏みとどまり、城に戻りかけた足をそちらへ向ける。

prev | top | next















×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -