Goblet of Fire-5



眠るようなハリーの肩に、喧騒を堪えるように埋めていた顔を上げると、もうあと残り少ない火だけを残して、炎は多くのテントを骨だけにしてしまっていた。ここへ着いたときの景色とはまるで違う悲惨そのものの辺り。月明かりがぼうと照らす、立ち込める煙が不気味なのは、夜が更けたせいだけではない。
今頃自分たちを探しているだろうか、友達家族たちに迷惑をかけてしまうのはみっともなく思いつつも、話すこともできないがハリーとは一緒でよかったと名前は頭の隅であらためて安堵する。ハリーが目覚めたら何からしようか、そんなことを考えていると、ガタン!と木片が衝撃を受ける音が響き、名前は肩を跳ねさせた。

テントの骨の影からできる限り息をひそめ音のほうを見ると、遠くに杖を手にした男性の影が見えた。

「"モースモードル"!!」
「!!」

魔法は夜空に向け放たれた。一瞬あたりを不気味に光らせ空に現れた骸骨が、蛇をゆっくりと吐き出す。名前はハリーのそばに縮めた身をそのままに、上空から男へ視線をうつした。何か期待や希望に満ちた、印を見上げる男の顔が、鮮明に月光に映し出される。目が離せない心地でいると、そばでハリーが目を覚まし、苦しそうに息を吐いたので、咄嗟に彼を支える。

「ハリー、」
「!名前、みんなは」
「しっ!」

静かにして、と手で制して、また男を見ると、ハリーも視線を同じ方向へやった。男はこちらを見ていた。名前は血の気が引かせ身を強張らせる。ぐん、と大股でこちらに歩きだした男に、名前も、ハリーも息を震わせて後退った。男から目を逸らせないまま小さく、立てる?と聞けば懸命に頷いたので、それを合図にするように、男に背を向けハリーと名前は一気に走りだした。互いを庇いつつ、テントの骨の合間を走り抜ける。

「ハリー!! 名前!どこだ!」
「ハリー!」

距離がなんとかひらいただろうかと男を振り返ったとき、アーサーとハーマイオニーの声が静かなこの一帯に響き、その声から逃れるように、男は方向を変え走り去った。名前はハリーを支えたまま、ハリーはテントのロープに手をやったまま、アーサー達に応えるのも忘れ、去った男の影に目を見張る。するとすぐに足音がそばまで届きハーマイオニーたちがやって来てくれた。心配でたまらなかったというようなロンの声が近くに響く。

「二人とも捜し回ったんだぞ!心配させるな」
「「名前!!」」

すぐ後にフレッドジョージがやって来て、少しハリー達から歩み寄った名前をフレッドが強く抱き締めた。広い胸に埋められ顔も、ジョージの顔すら見えない。息も、鼓動まで届きそうなフレッドとの距離に驚く名前の、行き場無くした片腕に、なだめるようなジョージの手が添えられる。少し間を置いて離れたフレッドはまた以前のように怒っているだろうか、少し髪をボサっとさせた名前が恐る恐る見上げると、気まずそうに目を合わせられないフレッドがうつった。

「…怪我は」
「ないよ。ごめんなさいフレッド、みんなも…」
「よかったよ」 「あれは!?」

フレッドとは異なり、少し笑みを見せて名前の浮いた髪をといてやりながらジョージが安堵すると、ハリーが空に出た印を指したので皆そちらを向いた。続けて額の傷を抑えたハリーに名前が駆け寄ろうとした寸前、彼ら目掛けて八方から呪文が唱えられた。

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