Goblet of Fire-4



"♪ 愛しいビクトール!愛しいビクトール〜
あなたを想うと胸がドキドキ…"

クラムのすごさを熱弁するロンに、恋したの?とジニーがからかったのを皮切りに、全員ロンをからかいだした。皆で歌っているとフレッドはふとテントの外の歓声が耳に入り、振り向けばテントの出口を眺めたままそっちで佇む名前が目に入った。

「アイルランドが騒いでるな」

何気なく声を掛ければ、同時にテントの外の人々の声が増し、はっきりとそこらに響いた。名前がフレッドを振り向くと同時にアーサーが忙しくテントに戻ったので、名前もまたあたふたと向きを変える。

「やめろ!」

アーサーはクッションで叩き合いふざける息子たちの間に入り、やや深刻な声で止めた。つとめたように冷静に皆に言い聞かせだが、状況はよくなかった。
フレッドがアーサーから名前へ目をうつしたが、そこはもうすでにもぬけの殻だった。

「… ? 名前?」
「彼らじゃない。ここを出るんだ。はやく!」

アーサーの表情に、ハリーはふざけていたのをすぐにやめ、きょろきょろと名前の影を探すフレッドを追い抜いてテントを飛び出した。
外は逃げ惑う人々に、各々の魔法の衝撃音が飛び交い荒れていた。一帯が悲鳴に囲まれ、少し先のテントでは火の手も上がる。走り去る人は皆恐怖をうつす表情で、口々に死喰い人(デス・イーター)だと叫び慌てていた。
フレッドジョージには妹を守るように、全員にははぐれずにポートキーを目指すよう告げ、杖を構えたアーサーが混乱の中心を目指して走る。フレッドはジニーを抱き寄せてから、周囲をあたふたと見渡した。

「名前!どこだ!?」
「フレッドここはまずいよ!とにかく少し離れないと!」
「名前!!」

テントから一歩出ただけで、走りゆく大勢の人の波にのまれ危うく足を取られかける。ジニーに怪我が及ばないようなんとか守りながら、二人は名前をきょろきょろと探しつつポートキーへの道に沿って人の流れに逆らった。
名前だって少し外をうかがっただけのつもりだったが、同じようにあっという間に人の波に飲み込まれ、歩みを変えようにも変えられず、人の肩で体や危うく顔も打ちながら、気付いたころには少し離れたところに面の集団を見つけてしまったのだった。耳に残る邪悪な声で呪文を唱えながら、周囲のテントにも、逃げる人にも、かまうことなく杖を向ける。しまった、と思う頃には皆のいるテントからは離れてしまっており、なんとか人の波の及ばない物陰で、火の手や奴等が少し離れるまで身を縮こまらせていた。

ほかの皆はなんとか束になって、移動をしながら名前の名前を懸命に呼び続ける。するとハリーもまた、混乱の人の波に阻まれはぐれてしまう。ハーマイオニーがいち早く気付くも駆け寄りもできないほど、周囲の人によってぐんぐんと離されていく。
ハリーはとにかく走った。デスイーターに、ごうと上がる火に阻まれながら、なんとかポートキーを目指したがそううまくはいかず、派手に転んでしまう。一度転べば体勢を直すのは困難だった。視界ぜんぶが走り狂う人々の足のみ。衝撃にハリーが倒れ込んでも、必死な人々が、物陰で小さくなる名前を除いて、気が付くわけがない。

「!?  ハリー!」

名前は目を疑い、なんとか飛び出してハリーに駆け寄り被さる。顔の横に手をつき、肩や頬に触れ懸命に呼びかけるが、眩暈がしているようでハリーは苦しそうに閉じた目を開けなかった。名前自身も人々に踏まれ損なう衝撃に顔を歪めつつ、なんとか彼を守ろうと踏ん張った。閉じた目も回っていたハリーの耳には、遠くから喧騒と、名前の自分を呼ぶ声が届いていた。

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