Goblet of Fire-3



ロンにはアーサーでなく別の声が応えた。そちらに目をやると、上る自分たちを見上げ笑う、ドラコにルシウスの姿。名前が隣のアーサーやジョージの表情をうかがうと、誰からも笑顔が消えている。自分たちは貴賓席だなどと元気に威張るドラコに、言い返そうと息を吸い込んだところで、フレッドが名前の腕をクンと引いた。振り向けば歩き出したので、名前も無視して階段を上ることにした。振り向いて不愉快だと言っているような目を、ジョージ越しに向ける。

「ドラコ 自慢はよせ。相手にしても無駄だ」

そう言って見上げるルシウスがハリーの袖口を杖で捕まえて"今の内だ""楽しめ"などと言い聞かせているとは、知りもしなかった。
観客席すべてを見下ろせるまでに上り、やっと最後列の最上列に着いたとたん、名前は柵をくぐったり跨いだりする間もなんのその、口を流暢に動かした。

「そんなこと言われたの?相手にしても無駄なのはこちらこそよ!いいねハリー?ここから見下ろしてやりましょ。言われなくても楽しむに決まってるでしょ!」
「名前、お前よく我慢したよ」「あぁほんと」
「頑張れーーー!」

ハリーは、もはや楽しそうにそう話し歓声を上げる名前に、続けて声を掛けるフレッドジョージをも笑っていた。両手を広げ応援する名前に、少し先にいるセドリックが身を乗り出して、周囲の歓声に負けないように大きな声を掛けた。

「名前!今日は目を瞑らないんだね」
「うん!不思議。二人がこっちに居るからかな?」
「「!」」
「いっけ〜!!」

セドリックに応えながら、フレッドジョージを振り向き、また歓声を大きな声で上げる名前に、紡いだ口から笑みを隠し切れない二人に、セドリックは"だってさ"と笑って自分も会場を見下ろした。
ほどなくして、アイルランドチームが緑と白の煙を携えて猛スピードで現れた。全員に笑顔がふたたび咲き、花火から現れた巨大な人形のダンスにアイルランドコールが始まった。打ち壊すように現れたブルガリアチームに、緑と白だった会場は一気に赤に染まる。世界最高のシーカーと名高い、クラムのコールがやがて始まった。
どちらのチームにも歓声も拍手もやめない、とにかく観戦が楽しいといった様子の名前に、思わず吹き出すようにしてフレッドがつられて笑う。学校での試合もこんなふうに応援してほしいものだとも思いながら、先ほどの彼女の言葉もまた、素直に嬉しく、頭の隅に、恐がるように目を覆い身を縮める名前のいつもの様子を思い返した。

大臣の開会宣言に、一度は静かになる会場も、やがて再び大歓声に包まれ、最上列の皆も白熱したまま、試合を見届けた。


…――

「こっちにも灯りを?」
「あぁ名前、ありがとう」

テントに帰って来ても熱気は冷めやらず、賑やかなままの皆をそのままに名前はアーサーを手伝った。名前が傾けたランプにアーサーも手を添え、杖で火を灯す。

「…?」

笛を真似たり国旗を羽織ったり、クラムに感激するロンを皆でからかったりと大賑わいの皆の声の隙間で、名前はふとテントの出口に目を向けた。杖の先を吹き消したアーサーの耳にも届き、出口から覗こうか足を運びかけた名前の肩に手をやり制して、追い抜いて外へ出た。名前は戸惑ったが制された通り、その場を動かないまま様子をうかがった。

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