Prisoner of Azkaban-23



「シリウスは上の塔に閉じ込められておる。ミスグレンジャー…ルールどおり、姿を見られぬように。そして戻れ。最後の鐘が鳴る前に。さもないと恐ろしいことになる」
「…? …」

言い聞かせるように振り返ったダンブルドアとハーマイオニーを交互に見るハリーを見るに、意味が分かってないのはこの子も一緒だと名前は目をやる。視界の隅で、意味が分かっているかロンも名前の表情をうかがっている。
いつもなら真相を自分も知ろうと嬉々として加わるが、今はそんな気になれない。気が進むことと言えば、日が昇り明るくなったら早急にグリを探しに行きたかった。
もはやダンブルドアは、今はハーマイオニーにだけ言い聞かせている。

三回まわせばいいだろう、とウィンクして、ずっと意味が分からない、ハーマイオニーには分かる様子の内容を聞かされると、"幸運を"と、去ってしまった。ハーマイオニー以外の者を代表するように、ロンが呟いた。

「今の話はなんだ…?」
「歩けない人は待ってて。…目を腫らしちゃった子も」
「…」

目をやるロンの横で、名前は気まずそうに口を紡いだ。すると首から下げていた様子の何かをハリーの首にも掛けさせ、何やらごそごそしだすハーマイオニー。
名前はもう一度、窓の外を見た。グリ、きっと痛い思いをしているだろう、今どこに居るのか、ここから、弱々しく歩く姿でも見えないか。
肩を落とす名前に何か言葉を駆けようかとロンが息を吸い込むと、再びドアが開いたので振り向いた。

「…?」「!!?」

入って来たのは、ハーマイオニーとハリ―。名前はあれ…?と、ロンと自然と同じ驚愕した顔を向けた。情けなくロンが声を上擦らせ、指差して尋ねる。

「どうしてそこに…??今までそこに居たのに…」

困惑する二人と対照的に、ハリーもハーマイオニーも、なんだか清々しそうな表情だった。

「何のこと?ハリー」
「同時に二か所に居るわけないだろ」「フフ…!」

「「……」」



…――

寮のベッド。枕に頭を沈め名前は二人が先ほどロンと自分に聞かせた話を思い返す。待っててと告げられ、二人が行ってきたのは数時間前、7時半だと。橋を渡らないほうがいいと言って分かれたあたりに、戻って来たというから驚いた。シリウスも、バックビークも助けたと嬉しそうに話すハーマイオニーを見ながら、名前は数日前彼女に感じた違和感と、結びつきそうで、結びつかない、不思議な感覚を頭の隅で覚えた。

「スネイプ先生と柳まで来るあなたのことも見たわ」
「、本当?」
「怒られたのに、すぐまた戻ってきたでしょう?」


「……」

"二人ともすごい"とか、"ありがとう"と伝えるのに気持ちを乗せられなかったのは、グリの安否が分からないのだから許してほしい。
名前は泣いて重くなった瞼も助けて、すぐに眠った。

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