Prisoner of Azkaban-20



溜息をついて視線を落としたルーピンは、言い聞かせるようにハリーを振り向く。

「ハリー… この男は―」
「分かってますが、一緒に城へ」
「…なんと慈悲深い…!ありがたい…!」

涙の一滴も見えない不愉快な演技とともに跪くペティグリュー。シリウスも、ワケを聞きたいという視線をハリーに向ける。ハリーにすがろうとしたペティグリューは彼に拒否され、そのまま床に手を付いた。

「城に連れていって、ディメンターに引き渡す」

ハリーを見上げたペティグリューは、今度は偽りでなく、指の欠けた手を口元にやりカタカタ言わせて恐怖に震えた。

全員で屋敷を後にしようと来た道を戻る間、ハリーと共にロンの肩を支えつつ、シリウスは噛みついたことを謝罪した。



「少しズキズキするだろ?」
「少し?足がもげかかった」
「ネズミを狙ってた。普段の私は、性格のいい犬だよ。…名前がよく知ってる」

一番後方の、ルーピンとともにペティグリューに杖を向けつつ"大丈夫かなスネイプ先生…"などと話している名前を、チラと振り返り笑うシリウスに、ロンは不信一色の目を向ける。
その隣のハリーは、彼から少し聞けた父の生前の話が嬉しく、笑顔を見せていた。


出口の間近でペティグリューが悪あがきを見せるので名前が険しい表情で見上げ順番を待つ。柳の足元にゆっくり座らされたロンと、心配そうに隣に屈むハーマイオニーに慈悲を乞うので、黙らそうとルーピンが乱暴に引きはがした。前があいたのでやれやれと、名前も力を振り絞ってよじ登り地上へ出る。
ルーピンとはさむようにしてペティグリューに杖を向けたまま周囲をうかがうと、ロン達と、少し向こうにはホグワーツ城に見惚れるようなシリウスとハリーの背中。声も聞こえないが、シリウスのことは完全に恐怖対象から外してよさそうだと、少し残っていた疑いの念を捨てた。ペティグリューに集中し直そうと構えた瞬間、ハーマイオニーの声が響いた。

「ハリー!」

何事かと皆が彼女をバッと振り向く。指差されたのはここから全貌も見渡せる、空に浮かぶ満月。遠くの高い山から顔を出し、そこに居る全員を明るく照らした。
月がどうしたの…とハーマイオニーを振り向こうとすると、ペティグリューの歓喜にも聞こえる独特な呼吸が耳に届き、名前が慌てて振り向いて、絶句した。

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