Prisoner of Azkaban-19



もう夜も更け、シリウスブラック、ディメンター、例のあの人、スネイプと恐怖の対象が多い中一人で穴の先の道や叫びの屋敷を恐る恐る歩くのは、名前も少し堪えたが、息を潜ませ三人を助ける一心で歩を進めた。

屋敷の一階、ハリー?とぽそっとつぶやくと、上の階からドタバタと複数の足跡に混ざり、ピアノの不自然な音が届いた。振り返り急いで駆け上がると部屋へ入る寸前、バキバキと扉の下部を割って足元に飛び出た影に、名前は体を曲げるように急ブレーキで止まった。

まさかグリかと思ったらこちらを見上げる知らない顔に顔を歪める。中から無理やり抜くように引っ込んだのでドアを開けると、名前は目の前に居る手配書のシリウスブラック本人に驚き、取り出した杖を両手で構えた。
ルーピンとシリウスはドアから引き抜いたペティグリューに杖を向けたまま名前に目をやる。ロンはペットのネズミが人に変わるし名前までやってくるしで声も出せない動揺っぷりだった。

「…客人が多いな」
「「名前!」」
「!三人とも無事!?スネイプ先生も来たでしょ?」
「……、」
「……、」

三人そろって後方の壊れたベッドをチラと見るので名前もそちらの、横たわるスネイプに目を向けると、ペティグリューに目を見張ったまま、ルーピンは名前に伝えた。

「名前も構えるんだ」
「、…、 …」
「リーマス…?シリウス…!懐かしの友よ!!!」

隙を見て逃亡をはかるペティグリューを二人が逃がすまいと取り押さえる。驚いて肩を跳ねさせ、三人へ駆け寄り盾になるように名前は立ち、再び杖を構えたが、いまだに向ける先がシリウスとペティグリューで迷っている。状況をなんとか理解しようとするが追いつかずにいると、ペティグリューの見開いた目が名前の後ろのハリーをとらえる。なぜか不気味に見える彼に震えそうになりながら名前はどかずにいるが、間に立つ名前に構わずペティグリューは歩み寄る。

「ハリー!驚いたな…お父さんにそっくりだ…親友だったんだ」
「よくもそんなことを!」

ハリーを庇いつつ怯える名前の間に入り、止めたシリウスの表情は怒りそのもの。ペティグリューはピアノの奥へ逃げる。名前は守ってくれたともいえるように入ったシリウスにさらに混乱するが、ルーピンにも聞けそうな状況じゃない。二人は声を荒げる。

「この子の両親を裏切り…」
「ヴォルデモートに売った!」

「どうなってるの…?」

口論の内容から察するに先ほどドアを壊したあいつで間違いなさそうだと、名前は杖の向ける先を察したが、シリウスに向けなくてよくなる理由や、ルーピンが居る理由と、混乱の要素が多すぎた。ぽつぽつと、後方のハーマイオニーから耳打ちするように伝えられた、シリウスに被せられた、ペティグリューの罪の内容。同時にあの人の存在が解明されるような感覚に、名前は恐怖の色を帯びた目でペティグリューを見た。

「あの恐ろしい闇の力…分かるだろうシリウス?君ならどうした」
「死を選んださ!友を裏切るぐらいなら!!」

「! ハリー!」

名前の位置から、シリウスの表情はよく見える。
状況を理解しはじめていると、ピアノの下をくぐりドアを目指したペティグリューに、名前の背後から駆けだしたハリーが立ちはだかった。引き戻したシリウスとルーピンが一歩も動かせまいと杖を構えなおした。

「ヴォルデモートでなく、我々二人が殺す!」

「やめて!!」

ペティグリューを二人の杖から庇うべく叫んだのは、ハリー。張り詰めた空気が少し緩み、皆が荒げていた声を落とした。

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