Prisoner of Azkaban-18



校内、灯台の火の揺らめく廊下。名前が隠れるように入った先に居たのは向こうへ行ってしまうダンブルドアとスネイプの後ろ姿。柱の陰で"なんで…!""もうっ…!"と気が済むまで絶望して、さらに向こうにはほかの教員の影もある中どうやってこちらに気付かせようか考えた。絶望の内容は"なんで最後尾が校長先生じゃなくてスネイプ先生なの!""もうスネイプ先生を呼ぶしかなくなった…!"だった。どちらかといえば名前は、ダンブルドアのほうがいいと感じていた。

こうしている間にも三人に危険が及ぶかもと考えれば、名前は思い切るしか手段はなかった。息を短く吐いて一番そばの灯台の火に指を鳴らす。そのままスネイプのそばを目掛けて投げるように腕を振れば、小さな火花に変わって、思い通りにスネイプにだけ気付かれる範囲で彼のそばでパチ、とはじけた。

ダンブルドアは向こうへ歩いて行っていまう間、近くで弾けた火と、誰の仕業かというように怪しんだ表情でスネイプはゆっくりと振り返る。説教を発そうと口を開けたのをさえぎろうと、名前は声なき声と、全身の動きで、暴れ柳のほうへ来てほしいと無礼承知で表現する。

「(スネイプ先生!!こっちへ!
柳のところへ!
ハリーが!!)」

パクパクと、大きな口で"ハリー"と伝えた瞬間、スネイプの表情は変わった。音もなく、表情は名前を今にも説教しそうな初めと同じまま、彼はこちらへ向かってくれた。

説明をしながら暴れ柳を目指す間、スネイプの歩く歩調の後ろで、名前は最早走っていた。ふと止まるよう出された腕に名前は上がっていた息すら止めて指示に従うと、まだ遠く離れている柳のそばに人影が見えた。
その人は洞穴へ入っていったので名前は誰かも分からず困惑してスネイプを見上げたが、彼は異なり察しがついたようだった。名前には何も告げず、名前も誰でしょうかなどの問い掛けをする気にもなれず、また再びもとの歩調で進んだ。

暴れ柳のそばまでスピードは緩められず、ぐんぐん進み彼が杖をスッと構えると、別の生き物のように暴れ柳は"カサ"とすら言わない。
息が上がってしまった名前は根の下の穴を指し示す。それを眺めたまま、名前を振り向きもせずスネイプは口を開いた。

「ご苦労」
「ゼェ…さ……では行きましょうか」
「馬鹿を言うな、君は寮へ戻りたまえ」
「! なんッ …」

視線とともに、暴れ柳を制していた杖がゆら、と名前に向けられたため名前は口答えしようとした口を堅く閉じる。戸惑ったままの瞳は、スネイプを見て1mmも動かせなくなっている。

「君の説明とも呼べないそれによればこの先に手を焼くあの三人組が居るのであろう 君まで居ては 非 常 に 邪魔で足手纏いだ。うまく隠せているつもりであろうが何と言い付けようと君が聞く耳を持たぬ生徒であることもよく知っている。上級生がたった一人混ざってみっともない。寮へ、戻りたまえ」

「………」

はい と名前は目を逸らせないまま辛うじて、返事すら許さなそうなスネイプに答えた。しゅんとして踵を返す名前をしばらく見て、スネイプは歩を進める。
彼はこの通り道のことなど既に知っていた。下手に話して名前に自身を探らせることがあってはならず、同時に名前がどこまで知っているのか、道中彼女が話す間、まるで彼女を試すように耳だけ寄越していた。


名前はとぼとぼと寮を目指し、城へ踏み入れる寸前、

「何と言い付けようと君が聞く耳を持たぬ生徒であることもよく知っている。…―」

「(…つまり"あとでおいでよ!"ってこと?)」

名前はフレッドジョージに、完全に感化されている。
先ほどあの香水で不可解な目に遭ったというのに、スネイプに縮こまったというのに、都合のいい解釈をした途端表情をパッと変え、さっきとは違う足取りで再び柳のもとへ急いだ。

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