Prisoner of Azkaban-17



ハリーとハーマイオニーは暴れ柳の足元から飛び込み、岩の削られた道や階段を進んで辿り着くのは、叫びの屋敷だった。ロンの引きずられた跡と、犬の無数の足跡が不気味に残っているのを追う。屋敷にあがると、話しかけるように建物全体が低く軋み、歪む。

「ここは"叫びの屋敷"でしょ?名前大丈夫だったかしら…」
「居てくれたら詳しかったかもね。 …行こう」

二人は名前を案じつつ、恐怖で出にくくなった足をなんとか動かし、ロンの救出を急いだ。
階段を上がるとロンの恐がる声が一気に近くなり、一室をハリーが振り返る。置かれるものすべてが古いボロの、部屋の隅のソファに、ネズミを抱えたロンが小さくなって座っている。

「ロン!」
「ロン!無事なの?」「犬は?」
「ハリー、罠だ!犬はあいつだよ!!」

恐怖一色の顔でロンが指差した部屋の隅、二人が振り返った先に続く犬の足跡の終わりに、シリウスブラックは立っていた。


「………」

名前は死に物狂いで包を開けた次の瞬間、大の字に寝転がり空を見上げ呆然としていた。投げ出した両手の甲にツルツルの床なのであろう冷たい感触こそ伝わるが、青や黒のような景色に散らばった金色の星に目を奪われ、顔を動かせなかった。鼻には、先ほどの香水の香りが、きつく纏わり付いている。

水流に揺らめくように、次はフーッと吹き消されるように、星たちが動き回るのは、魔法のように非現実的でとても美しく、名前は夢を見ているときと同じ心地だった。

" 1970年 "

「………(第一次魔法戦争…)」

ふと、誰が言ったわけでもそこに描かれたわけでもなく、頭をよぎる言葉。星がまた揺らぎ、壁画のように人を描いた周辺を、流れ星が駆けてゆく。名前は静かに、流れ星を目で追う。
星はその人の顔を目掛けて二回、片足を目掛けて一回、真っすぐと駆け、その人型はそこから消えるように闇に溶けていった。

「で?どうやって抜け出した?」
「閉じ込められた中はどうだった!?」

「(そうよね…寝ている場合じゃない)早く起きなきゃ…」

ぽそと呟いて、本当に寝ているときのような声色に自分でも驚きつつ、早朝のようにまぶたが重くまた閉めてしまいたいとゆっくり閉じるにつれ、鼻に留まる香りに惑わされるように息をゆっくり吸い込む。
とたん、空間を叩き割るような衝撃と同時に、全身の感覚が一変した。

ギャリギャリ!と音を立てて、名前を閉じ込めたスフィンクスが、暴れ柳によって叩き割られる。この小瓶の魔法は、ふざけたスフィンクスはどんな衝撃でも傷ひとつ付かないが、底の腹のほうの小さな穴を軽く叩けば、面白いほど簡単に壊せるというものだった。

「うわぁ!!?  わぁ…!、わ…」

キラキラと輝いた景色から瞬時に元の日没後の時空に戻り、名前は寝転がったままバタバタと辺りを警戒する。口元の土をやっと払い状況を整理していると、暴れ柳の蔦がこちらにシュルシュルとやって来て、両脇から抱えるようにしてストン、と名前を立たせた。なされるがままの名前が見上げるが、暴れることなく、いつもの、季節ごとの変貌を眺めさせてくれる愉快な柳に戻っている。

「あなたが出してくれたの?」

今度は笑顔で根を駆け上がり、手を目一杯広げ幹に抱き着き、お礼を言う。柳はざわざわと波のような音を立てるだけだが、名前を笑顔にさせた。


「急がなきゃ二人が……」

名前が暴れ柳の見物の際に、よく見た人影はスネイプだけだった。助けを呼ばないと自分ひとりじゃどうしようもできない。グリを見たら彼は追い出してしまうだろうか、
いろんな考えがよぎったが、名前は賭けるような思いで、柳のもとを離れ校内へ急いだ。

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