Prisoner of Azkaban-15



「もう日没だね…、あの子たち、戻らないね」
「……」
「ありがとう。グリに話してたら、落ち着いてきたよ。私もそろそろ寮に…―!」

日が傾き薄暗くなりつつある。ぽつぽつと話される名前の言葉を、彼はそばに座ってずっと聞いてくれていた。またねと言うつもりだった名前は、突然橋の向こうをバッと振り返り伏せていた体を起こした彼に驚き、言葉を止める。
呼んでも、じっと向こうを見つめ、彼と視線の先を名前が見ていると、急に走り出した。ただならぬ様子に、名前はもしかして家族を見つけたのかと、大声を出して後を追う。

「グリ!! どうしたの!?」

懸命に手足を動かし、城壁に沿うように野原を駆け下りる。暴れ柳の見物に行く道は名前も慣れていたが、少し見えた彼の表情が穏やかではなさそうに見え、心配があった。走る間も、名前を呼び続ける。

少し丘になっているそばで、スピードが落ちたので彼の隣を目指す。一体どうしたの…と駆ける声は、暴れ柳の近くに座り込むロンの大声にかき消された。

「二人とも逃げろ!!グリムだ!!!」
「「!?」」

ネズミを抱いたまま、指をさして叫ぶロンにハリーとハーマイオニーが振り返ると、威嚇する声を立てる大きな黒い犬の隣に、名前の姿。
やっと追いついたと思ったら丘を越えてはじめて目に飛び込んだ三人に名前は困惑した。

「名前信じられない!!飼ってたのか!?墓場の亡霊のグリムを!」
「違う違う、迷子のグレーのグリ!みんな何してるのこんな…、!?」

ロンと大声で会話している間も、グリは威嚇を続け牙を見せて怒りをあらわにしている。名前の言葉の途中で吠え、柳目掛けて駆けだした。

「グリ待って!!!大丈夫よみんな!、噛まないから…」

走って追う名前が言っているあいだに彼はハリーらを簡単に飛び越え、ロンの足にかみついた。

「ごめんやっぱり偶に噛…」
「ロン!!」

噛みついたままロンを柳のふもとまで引きずる。助けようと追うハリーにロンも必死に泣き叫び手を伸ばすが、あと一歩のところで届かず柳の根の間へ引きずり込まれてしまった。
追いついたハーマイオニーの少し後ろを駆けていた名前は理解が追いつかず呆然としていると、柳の異変を感じ取り、ハッと見上げた。

「二人とも危ない!」
「「!!」」

暴れ柳から、細く束になった蔦が鞭のように大きく振るわれハリーとハーマイオニーの腹を打つ。まるで近付くなという仕打ちに名前が痛そうな顔をしていると、狂うように幹も枝も暴れさせる暴れ柳に青ざめた。中からは、絶叫するロンの声も聞こえる。支え合うようにして立ち上がったハリーとハーマイオニーをどう庇おうか、どうすれば暴れ柳が落ち着いてくれるか、暴れ柳をも可哀そうに思う名前は必死に考えたが、名前の考えなど無視して、ハリーとハーマイオニーは暴れ柳へ突っ込むように走り出したので、名前は再び青ざめた。

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