Prisoner of Azkaban-14



その日、名前の表情は暗かった。それって名前がハリーと話してたやつじゃないか?とフレッドジョージがこちらを振り向き、同級生たちの会話に混ざれば聞かされたヒッポグリフの処刑、しかも今日の日没に行われるという、目の前が真っ暗になるような事実。理由まで聞けば頭を抱える内容。

時間が進むにつれ居ても立っても居られなくなる。ハグリッドはどうしているだろう。一人でいたい気分だろうかと、そんなことで頭がいっぱいのまま時計台のあたりをうろうろしていると、ハリー達三人がやってきた。
すぐにハグリッドの元へ行くんだと分かり、この子たちが行くなら自分は遠慮しようと、力なく笑顔を見せた。

「聞いた?その…バックビークのこと」
「名前、結局見られなかったろ。残念だったね」
「、名前、今日はさ…、橋を渡らないでいなよ」
「処刑されちゃうから」

あぁくそ…と、ロンと交互に話していたハリーが無念そうな表情を見せる。ハーマイオニーは眉を下げて名前を見つめる。ハリーの配慮を受け取ろうにも心からは笑えない、名前の表情がそうさせているのだろう。

「そうね。ここまでにしておくよ」

ハグリッドのことを思うと…と口にすれば涙が出そうになるのはハーマイオニーも同じで、よろしく言っておくわと、彼女は名前を励ますように肩に手をやった。
彼女と、気まずそうだが"名前、元気出して"と言うロン、小さく手を振るハリー
が橋へ向かうのを見送る。
しばらく佇んでいると城の柱の影で枯れ葉が"カサ"と鳴った。

「グリ…」

こちらに来たそうな素振りと、行けない素振りを見せる彼が愛らしい。名前が歩み寄ると、いつも通りハッハと呼吸の音だけ立てているが、見上げる視線はまるで名前の表情をうかがっていた。


……――

三人がハグリッドの家を目指す途中、目に入ったのは岩陰から覗き見るドラコ達。首をもらってグリフィンドール寮に飾ろうなどと笑って双眼鏡を構えている。頭にきたハーマイオニーはずんずん突き進み、ドラコの首元に杖を突き付けた。
そんな価値ないからやめろと制するロンに、いったん静かに杖を下ろし振り返るが、
すぐに向き直り思い切りドラコの顔の中心を殴った。
お仲間はずれ落ちそうなドラコを腕を一人ずつ取り、行こう!と足早に逃げる。

「……いい気味」
「いいどころか…最高だよ!」

そう思っているようにも、気まずそうにも、やってしまったと思ってるようにも見える表情でハーマイオニーはロンとハリーに視線をやったが、こちらの二人は笑顔そのものだった。それも名前に習ったの…?なんて小さく聞くロンを笑って流しつつ、ハグリッドの元へ急ぐ。


名前は階段の端に、迷い犬はそれに続く原っぱのほうに腰掛けて向き合う。どうしてこんなことにだとか、見れなかったことよりハグリッドが心配だとかこぼしていると、橋のほうから慌ただしくスリザリンの三人がやってきた。

「! グリ、伏せて…!」

元から名前のそばでくつろいでいたが、名前の言う通りにさらに頭を低くする。名前は浅く腰掛けるよう態勢を変え素知らぬ様子を演じてグリを隠した。
そんな心配はむなしく、三人はすみに座り込む名前に気付きもせず走る。なんだか鼻が赤い涙目のドラコは"絶対に思い知らせてやる!"など叫びながら。

三人が行ってしまったのを見送って、"いい子"と頭を撫でれば、素直に撫でられ、視線だけ上げてくれる。彼を知ってそう日は浅くはないが撫でたのは初めてで、嫌がるかもしれないと思った名前はそんな姿に安堵して、その日はじめて笑顔になった。

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